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後継者不足の要因と今すぐ着手すべき解決策を解説

2023.06.07
日本における中小企業数は意外にも多い。経済産業省によると我が国421万企業のうち99.7%が中小企業だ。社長がそれだけいると考えるよりも、そもそも中小企業が一気に立ち上がったタイミングがあるという点から触れておきたいと思う。それは、戦後から立ち上がった起業家の時代があったからだ。中卒人材であったとしても一本やりで企業を立ち上げる場合も非常に多くいるがその人材たちにとってある問題が生まれている。それは後継者不足問題である、1950年に18歳で起業した人は現在75歳となっている。そろそろ本格的に次にバトンを受け継がなければいけない時期だろう。

株主総会が必要な規模の会社から、中小零細まで様々だがその多くは後継者探しや事業承継タイミングで一苦労している場合が多い。当初から家族経営規模で、息子や娘を社長と据えると考えていた場合であったとしても、難色を示し仕方なく社長を続けるといった場合もあり、社長が存命の期間が会社の存続期間だといわれる場合もあるほどだ。

本解説では、後継者不足の要因遠因は何なのか紐解き、絡まった課題とその解決方法について検討していきたい。現状、跡づきがいる、あるいはまだ考えるタイミングではないと思っている経営者・社長であっても最低限頭の片隅には入れておくべきだろう。

後継者不足の要因を解説

後継者不足の解決策に入る前に、その言葉の意味から解説していきたい。シンプルにいうなれば、経営のバトンを渡す先が存在しない「後継ぎ」がいないという会社の状態を指す言葉だ。これは、企業が赤字だから引継ぎ先がいないという訳ではない、むしろ黒字のときにも一定数発生し、従業員や市場シェアがあったとしても子供や親戚に社長をやってくれる人がいない。(あるいは、そもそも子供がいない場合ももちろん含まれる)職務怠慢による事業承継先がないという場合は少なく、いい人がいたら引き継ぎたいけれども仕方なく続けているという人も少なくない。

そもそも日本の人口傾向は労働者人口のニーズの増加に反し、少子高齢化が進んでいる。2代目や3代目などの事業承継経験のある経営者ならまだしも、起業家である場合自主的に後継者を生み出す、あるいは後継者を探すことをしなければNEXTアクションとしての会社を引き継がせて維持させたり成長をつづけることができなくなってしまう。その点わかってはいるが、実現できない理由がそこにあるだろう。

労働者であれば求人票や求人サイトを使用し募集すれば集まるものだ。だが、会社経営となると話は全く異なる。経営者というスキルは一朝一夕では育つことけっしてなく、かといって充足される事態を天命にまかせるということもできないだろう。結果、多くの企業が後継者不足の状態に陥り、新たな打開策を探しているといった状況なのだ。


後継者不足の現状

さて、このページを検索してきた経営者の多くは、後継者不足に悩んでいる、あるいは潜在的な後継者不足の課題感にアンテナを張っている人だろう。そうした人は全く少なくないことはデータによっても示されている。

帝国データバンクの調査によると、2011年から平均6割強の企業が後継者不足に悩まされていた。新型コロナウイルスの蔓延を経て後継者不足は少しづつ解消、2022年にはじめて57.2%の企業が後継者不足だと伝えている。依然として半分以上が後継者不足ではあるが、すこし状況改善している理由として挙げられるのは、①家族経営の廃止②廃業③M&A④自社内で後継者を見つけた などが挙げることができるだろう。

とくに②の廃業は、なかなかに多く中小企業の廃業理由の3割近くが「後継者がいないこと」であった。その多くが黒字あるいはトントンの事業者であることから考えると、従業員にとっても会社社長にとっても悲しい現状であると言わざるおえない。

社長の平均年齢からみる後継者不足の課題感

社長の年齢もまた後継者不足の現状を表していると言える。中小企業全体のとくに家族経営層をみてみると約半数近くが60歳以上、80歳を超える社長も多く存在している。家族経営の各会社のスタイルや、健康状態、あるいは働きたい需要などもあるかとおもうが、男性の平均寿命は81歳、女性の平均寿命は87歳というところから見れば、危険水準に足というより腰がつかってしまっている状態といっても遜色はない。

どの年齢で引退するかは人それぞれで、また健康寿命の上昇からみればいつまでも働きたい需要ももちろんある。ただ、会社が社会貢献を行いつつ存続をする組織とかんがえるのであれば、なるべく早く後継者を見つける、あるいは後継者となる候補に段々とバトンタッチをしていくのが正しいビジネス方式ではないだろうか。

この後継者不足は日本だけの課題か

後継者不足の解決策を見る前に、こうした課題は日本だけの問題なのかを見ていこう。まずはお隣の国韓国。日本以上に少子化が進んでおりM&A需要もさることながら廃業も増えている。特に飲食店などの後継者不足が顕著で、社長がプレイングマネージャーである場合もあり、中核の柱が存在しないのであれば続ける意味がないということでせっかく人気であったとしても事業廃業する場合が多い。コロナショックによるところも多いが、黒字や事業体力があるところであったとしても、リスクを超えて経営するモチベーションが湧かないといった場合もあり、なかなかに継続したくないということもあるのではないだろうか。

最大の経済国家アメリカの場合は、オーナー社長を見つける制度もあり家族経営規模だと難しいが、上場に至らない企業規模であったとしたら後継者を見つけるのは比較的容易とされている。日本はまだまだ少ない形式ではあるが、雇われ社長は株あるいは売り上げのインセンティブを得ることで強いリーダーシップと経営手腕を発揮してくれるわけだ。

ヨーロッパ企業の後継者不足解消は意外にも海外企業によるところも大きいという。得にお値ごろで購入できる企業の場合、投資ファンドや銀行、中国企業が買収する場合もありミドルカンパニーを多く従えるコングロマリット企業体も生まれている。ヨーロッパの国々による理由はあるものの、アントレプレナーシップを発揮する人材が育ちにくいという課題もあるといわれている。そういった面では、日本と同じような袋小路に入ってしまっている企業も少なくなさそうだ。

後継者不足が顕著な業種とは

では、業種ごとに後継者不足の現状を紐解いていこう。

まずは、後継者不足が起きていない(少ない)業種からだ。

1位 金融・保険業
2位 化学工業・石油石炭製造業
3位 パルプ・紙・紙加工製造
4位 ゴム製品製造
5位 窯業・土木製品製造

意外なことに、1位は41.3%と著しく低い。業界規模もさまざまだが、ある程度ファミリー化されにくい業種だともいえるのかもしれない。

さて、業種別・後継者不在率の上位はこちらとなる。

1位 専門サービス
2位 医療業
3位 職別工事業
4位 自動車・自転車小売り
5位 広告・調査・情報サービス

一般的に言われるのは「建設業」の後継者不足がより大きな課題とされていた。しかし業種を詳細に紐解いていくと専門サービスの方が高い水準で後継者不足にあえいでいるという訳だ。あくまでファミリー化しやすい企業か、M&Aなど成されにくいかなども遠因としていえるだろうが、自分の業界が後継者不足に顕著な状況ほど外部から経営人材を引っ張ることは難しいと理解しておくとよいだろう。

後継者不足がどうして発生するのか解説

複合的な要因はあるものの、後継者不足の解決策に入る前にまず後継者不足がなぜ発生してしまうのかについて考えていくことが必要だ。その原因についてより深堀して解説していきたい。

その理由について解説していく

(1) 経営人材が育ちにくい

多くのアントレプレナーを研究している教授が指摘していることだが、日本の教育や文化構造において経営人材が育ちにくいとされている。アメリカでは、レモネードスタンドとよばれるお小遣いをかせぐために小学1年生のころから自主的な起業を体験したり、会社社長になったらどうしたいかといった経営学を学ぶ機会が多い。

日本においては、良い意味で画一的な人材教育システムが存在する。一般的な会社員としては優秀なレベルになりえる素養のある人物を量産する制度と言えるだろう。ただ、なかなかにそうした学びの中では、新たな気づきであったり、新たな会社を作って既存事業にたいして革命を起こしたいという人材は生まれづらい。

なかなかに良くない言葉だが日本では「出る杭は打たれる」という言葉がある。経営者として成功するよりも、知名度と将来性のある企業で働く方が社会的に優れているとすら感じられる場合もある。(近年その空気感は解消されつつあるが)

アメリカであれば「The squeaky wheel gets the grease.(きしむ車輪は油をさしてもらえる)」という言葉もある。前にでて突出する人の方が皆から応援され、チャンスを得ることができるとされている。逆に音もなく、歯車のように淡々と生きる人材は及第点ということで社会的な評価は得られないとすら思われる風土なのだ。

前者の国と後者の国、どちらが経営人材が生まれるかといえばいうまでもなく後者なわけだ。起業家が多く生まれる風土があれば、後継者となりたいと手を上げる人も相対的に高まるはずだ。

(2) 少子高齢化

次にいえるのは、少子高齢化時代が到来したということだ。第一次、第二次ベビーブームのあと、継続して子供を産む環境にはならなかった。日本自体の総収入は高まり、より高い生活水準になったはずなのだが、高い社会福祉の税金や、未婚の増加、子供の出産を重視しない夫婦の価値観変化などがあげられる。

当たり前だが、少子となれば後継者人材として得られるパイも減少する。起業しバタバタと働き盛りの10年を優先すれば、結婚機会や出産機会を得られないという場合もあるだろう。昭和のファミリー企業であれば数人の子供の中から後継者を選ぶ人も多かったはずだ。

従業員の高齢化もまた、後継者不足にも拍車をかけるといわれている。年齢の問題は2代目社長のハードルとなることも実はあるわけだ。例えば従業員が50歳の平均年齢の企業の場合、後継者が20代あるいは30代だった場合どのように感じるだろうか。

言うまでもなくなかなかにコミュニケーションハードルが高い。わかりやすく伝えあったとしてもジェネレーションギャップが生まれ、うまく指導できない、あるいはうまく経営できないと想像してしまう。実際のところはどうであれ、会社を後継しなければいけない立場からいえばこの状況は適しているとはいいがたいはずだ。

少子化問題が解決したとしても、この引継ぎ先の候補者が不足する状態はなかなかに解消されないのではないだろうか。

(3) 家族が後継者にならない

父親や母親の苦労を知っているから社長にはなりたくないという層も一定数いる。

昔の喜劇映画の一説に「サラリーマンは気楽な稼業と来たもんだ」という言葉がある。実際はそのようなことはない、サラリーマンも大変なのだが受動的な仕事体系であることも多いということは言うまでもない。

会社から指示を受けてする仕事が多少はあり、ある程度のルール作りやセーフティーネットも存在している。仕事が合わないと思えば転職市場も開かれているわけだからなかなかにサラリーマンというのはリスクとリターンが伴った仕事と言えるのかもしれません

では、会社経営はというというまでもなくなかなかハイリスクハイリターンだ。家族のしんどい姿勢が垣間見えれば、なかなかに選ぶことは難しくなる。

「いやー社長大変だぞ。」

なんて子供に口癖のように伝えていたら、お父さんやお母さんの背中を追うどころか、そういった働き方はやめようとなってしまう訳だ。逆にやってやろう、社長になって父にすごいといってもらいたい!といった子供の育て方が成功する場合もあるため一概に社長であることでコミュニケーションを変えることを否定しないが、家族が後継者になるためにはいろいろな準備が必要となるのはいうまでもないだろう。

大変だけれども楽しい。あるいは、社長には社長にしかできないやりがいがあると伝えておくのが適正ではないだろうか。

(4) 赤字企業・非成長産業

非常に残念な話だが、日本は経済規模での成長が頭打ちとなっている。人口減少だけでなく消費する国民が減ってきている。そのためB2Cサービスの利用量や利用率は減少し、それに伴いB2Bビジネスの成長も鈍化してしまう。

なかなかに市場規模の減少にあおりを受ける企業というのは後継者不足になりやすい。それは従業員を多く抱える事業者であったとしても同じだ。後継者が生まれるということは、その産業に愛着を持ち夢を持ち、もっと大きくするというメンタリティが少なからず必要で、現状維持を狙う企業ほど成長できず赤字一歩手前になるまで前に進めなくなってしまう。

もちろん赤字企業というのは経営者にとって次にバトンタッチがしづらかったりする。経営者保障や個人融資などの借金がある場合、後継者にそれも合わせて引き継がなければいけない場合や、一時的な赤字ならまだしも累積赤字が重くのしかかる可能性があれば廃業しゼロスタートをした方がマシと考える企業もすくなくないはずだ。

(5) プロ経営者の奪い合い

また今後の日本経済の成長チャンスがあるとするならば、危機意識をもって前に進もうとする若手プロ経営者とのマッチングも一つであるはずだ。会社を継続し、後継者となりえて、自分が経営のかじ取りから手を放しても継続的に前に進ませてくれる経営者。実際そういったプロの経営代行者も少なくなく存在している。だが結果をだせる人材というのはどうしても、奪い合いになりがちだ。

日本に限った話ではない。アメリカのプロ経営者が事業承継した場合、著しく成長させた結果、もっとお金を出してくれる会社からヘッドハンティングされてしまう場合も多い。経営者というのは数年で辞められては困ってしまう訳で、結果を出せる人は早くやめ、結果が出せない人しか残りにくい構造となってしまっている点からもプロ経営者へのバトンタッチもまた後継者不足の根本的な解決につながらないということは理解いただけるのではないだろうか。

微妙なプロ経営者に頼もうと悩むよりかは、若手を大抜擢した方がマシと考える経営者が多いのもまたうなづける。

後継者不足を解決する方法を説明

大企業の後継者不足と、中小企業の後継者不足の解決策は大きく異なります。会社数のことから考えるならば、中小企業の方が顕在化していない問題を抱えているというのは前述した項目でお判りいただけたかと思います。では、その問題を直視したときにどのようにして解決するのかという抜本的な課題に向き合うべきときが来ているかもしれません。

(1) 社内から公募する

社長になる方法というのは世の中たくさん存在します。しかし、今働いている企業において社長になるためには、現社長の信頼だけでなく、今働いている従業員からの納得感や応援されるフォロー力もまた必要だ。

そういった意味で、応募者を募りそのなかから社長になりえる人を選定し、育てていくというのは実に民主主義的な決め方なのではないだろうか。実際にそうして社長を受けついだ人に話を聞くと、会社の資産や株については一部持ち、創業者と上手に折り合いをつけながら、ビジネスをうまく段取っています。会長がすべての下部を握っていたいと考えているときには選びにくい選択しですが、外部からの社長承知にくらべて(今なぜ成功しているか)ということについて、誰でも出られる状況というのもまた納得を生むための方式と言えるのではないでしょうか。

社長になりたいから入社しましたは冗談ではなく、社長になりたい人といって手をたくさん上げてくれる会社づくりを心がけていきたいものです。

(2) 子供・親戚を社長にする

同族経営やファミリー企業であれば、基本的には子供や親戚を社長にするスタイルが一般的かとおもいます。今子供がやる気になってくれない、引き継げないだろうとなんとなく感じて、言いにくい場合も多々あります。一度膝を合わせて社長を継いでくれないかと聞いてみる機会を作ってみるのはいかがでしょうか。

また、意外にすんなりうまくいくのは孫への事業承継です。従業員と新社長の年齢が離れてしまうと、軋轢を生むとされていますが大きく離れると意外と状況が良くなったりします。孫がまずは社員として入社。末端として営業にかかわり、経営について少しづつ学ぶ。そんな環境づくりまでやれば、あとは新社長の素養で決まっていきます。

そもそも子供に継がせたくないと考える社長は候補から外れる内容だと思いますがダメ元で子供を引き込んでいく(もちろん本格的に引き継ぐことを検討してくれることが大事ですが)交渉も後継者不足を解決するための大事な戦略のうちの一つではないでしょうか。

(3) プロ社長を雇用する

経営人材が枯渇している昨今、なかなかに難しいもの中興の祖となりえる人物を探すというのも一つのやり方です。

家族経営によるビジネスの難しさとして、ズバッと社内に言えないということや、経営の方針決めかねてしまったり、成長阻害を生み出してしまうこともあります。いわゆる忖度や配慮といった問題です。

こうしたプロ経営者は、働く企業をより成長させることが目的ですから、こういった外部環境の配慮は行うとはいえ、とにかく結果を出して成長させることが目的です。その目的に沿わない家族経営や勤務者について判断は合理的です。(時に冷たいとも言われるかもしれません。)

前述しましたが、できるプロ経営者は仕事が高かったり、コスト面でサスティナブルな形であると言えるのではないでしょうか。

(4) M&Aや合併を行う

業界の巨大なビジネスを提案したとしても、社長が不在の場合にいきなり立ち行かなくなるということは少なくありません。会社の売買自体を商売の道具としてしまったり、事業承継を最後の決め手としてしまうこと自体には大いに憂慮すべきものではありますが、会社の従業員や顧客からみたときに結果的にM&Aや合併が最善の場合ということもあります。

たとえば地域でしのぎを削るライバル店。そこと合併をすれば、過剰な値引き合戦を止めることができますし、店舗出店の最適化を実現することも可能です。

合併やM&Aといっても企業の名前は残り、傘下に入って完全消滅しない形での実現なども可能なため自社で引き継げる社長がいないのであればこれ自体も経営戦略の一つとして考えておくべきことがらなのではないでしょうか。

※とはいえ、繰り返しになりますがM&Aありきの事業というのも物悲しいものです。

(5) 廃業をする

自社での経営人材、社長がいない場合に自動的に選択肢として提示されてしまうのがある意味で最後の手段とも呼べる「廃業」です。大きな家の屋台骨を失った企業は、新たな柱を立てる前に崩壊しがちです。

社長から見ればゼロに戻ったという考え方もあるかもしれません。しかし、中で働いていた従業員やそのサービス・商品を愛した顧客目線でみれば、この選択肢は一番避けなければいけない事態といえるのではないでしょうか?

また違った観点から見ると子供やお孫さんに責任を押し付ける事態というのも避けたいもの。社長が経営に携えなくなった結果、突然駆り出される息子や娘さんというのはなかなかに、寝耳に水といった状況ではないでしょうか。そこに事業借金や、見えない地雷があったりすれば、将来設計は一気に瓦解してしまいます。それを避けるために廃業も一つの選択肢であるという経営者もいらっしゃいます。

どちらにせよ、会社は一時的な成功組織ではなく、半永続的な利益追求集団でありたいもの。そういった観点で、廃業という最後のカードはギリギリまで避けたいものです。

廃業は候補ではなく、最後の手段であるべきだというのは経営者でなくても同じ考え方ではないでしょうか。

(あらたなプラン) 会長職に昇格し、社長業の半分を引き継ぐ

社長業というのは、突然に終了するものではありません。社長がかかえているしごとを100%次の社長に受け継ぐことができない。(だから社長を引き継げない)と考えている場合、20%あるいは30%ぐらいの業務から分散させていくこともひとつのやり方ではないでしょうか。

会長職としてご隠居さんになるというのがいままでの、形だけの役職ポジションでしたがかならずしもそのフォーマットにもとづいて会社は事業承継しなければいけないわけでありません。基本的な方向感として、社長の仕事は社長の仕事としつつも受け継ぐ先にたいして教育する先生としてのポジションをいじすれば、いきなり社長になった人が困った事態になることを止めることができます。

特に社員の年齢が高い会社だと社長が年下という事態もありますから。大きなトラブルを避けるために社長と会長の二人三脚で会社を取りまわし、来るべきタイミングで社長単独でビジネスを回せるようにする。後継者として適合性が低いとなれば、別の方を社長として再教育。といった風に、会長として社長を育てるというのも一つの、後継者選定のやり方と言えるのです。

社長が働かない自働する組織にする

後継者不足になりがちな企業の共通点としてあげられるのは「社長が働きすぎる組織」であったりします。何かを決めるタイミングで必ず社長にあおぐ、トラブルが起きたときに矢面に立つ存在として期待する、営業活動やPRにおいて顔が見える存在として社長をプッシュする……。などがあげられます。

働いていないわけでなはないものの、自分で自律して考えていない人が多くなると社長の負担が大きくなります。自由と責任は伴う半面、縛ったルールの中では自律的な行動というのはあまり起きません。

組織体系としてより成長を見込むのであれば些末なことは社長に頼らない組織に変えていくべきでしょう。

「社長は働きません」と宣言し、組織を社長だよりのものから、社長がいなくても立ち行く、そんな存在に作り替えていくこと。それをやるだけでも、自主的な後継者誕生につながるのではないでしょうか。

各個人を業務委託型に切り替える

最後の方法として挙げられるのは業務委託型への切り替えです。昨今叫ばれるジョブ型雇用が増えていった場合、勤務人材を業務委託型メインにするというのは事業をスマートに運営することにつながります。

もちろん業務委託なので、一般社員と比較して値段が高くなりがちですが要件定義された仕事を確実に効率的に遂行するのが得意な業務委託型社員は、期間契約のコントロールが容易。契約社員と比較して、仕事に対するモチベーションが高いため、市場がまだ見えない業務や新規事業などのリスクビジネスでの活躍も期待できます。

単にコストカットとして考えるとなかなかに難しいですが、業務委託型とビジネスがマッチすれば、成長と撤退のコントロールがより実現しやすくなります。

さいごに

会社という組織は、社長というカリスマ性やビジョンによって成り立ちます。しかしながら、依存性が高いからこそ次に引き継ぐときに悩ましい状況になりがちです。社長としての最後の仕事は、新たな社長にバトンタッチすることだと定義するのであれば、良く悩み最適解は何かを考えていくべきなのではないでしょうか。

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