「侍精神」を持つ社長の会社が急成長する理由
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2026.08.16
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- いまの時代に業績を伸ばし続ける経営者には、3つの共通項があります。「原理原則」「時流適応」そして「選択と集中」を実践している点です。しかし、日本企業が成功するためには、もう一つプラスすべきと考えます。それは、他国には真似できない独自のアイデンティティ、すなわち「侍精神」を持つことです。船井総合研究所の山川雅生が解説します。
解説:船井総合研究所 山川雅生
INDEX
日本の黄金期には「アイデンティティ」があった
いきなりですが、過去の日本が世界にどう見られていたかを振り返ります。
ハリウッド映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー3」では次のような場面があります。1985年から過去にタイムスリップした主人公が、「日本製だから故障したんだ」と発言した相棒「ドク」に対して、こう言います。
「What do you mean, Doc? All the best stuff is made in Japan. (何言ってんだいドク。日本製が最高なんだぜ)」
画像:AI生成
このように1980年代は「メイドインジャパン」が世界的に評価されていました。その要因を振り返ると、単にモノを安く大量に作るのではなく、品質へのこだわりや、「ハイテク」「壊れない」など、当時の日本企業しかできないことを製品に込めていたからではないでしょうか。
平成にかけて、こうした独自性は鳴りを潜めていきます。経営トレンドはコストカットや、リーダーの色を消す「均質化」が進行。現場主導、仕組み化、マニュアル化が進み、多くの経営者が「社長がいなくても会社が回る」ことをゴールにしていました。
しかし、「なぜ自分たちがそれを作るのか」というあり方を見失い、他国でも作れるような均質化されたモノづくりで、新興国との価格競争に陥った会社がどのような末路をたどったかは、言うまでもありません。
そして時代は、令和へと移りました。
近い将来、運送業は無人化し、住宅は3Dプリンターで作られ、ウェブはAI生成コンテンツであふれると言われています。つまりビジネスの「やり方」は、ますます均質化していきます。そして、ビジネスの均質化が進むことで、これまで独自に経営を続けてこられた企業にも「他社との違いは何か?」という問いが投げかけられるようになります。
成功する社長の条件
本題に入ります。そのような「均質化」時代に、独自に業績を伸ばし続ける経営者の条件は、以下の3つの要素に集約されます。
①原理原則に基づいており、確固たるアイデンティティがある
第一の条件は、会社がなぜ存在するのかという理念やビジョン、すなわち「原理原則」に沿った戦略的な経営をしている点です。この原理原則とは、会社の「あり方」「核」であり、アイデンティティそのものです。この軸がブレてしまうと、年輪のように積み重ねてきた会社のブランドが剥がれ落ち、一介のスタートアップ企業と何ら変わらなくなります。伝統ある会社、成功している会社ほど「あり方」を重視しているのはこのためです。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ ②アイデンティティをブレさせることなく時流適応している
☑ ③エッセンシャル思考を徹底している
☑ 【事例】ケース①〜③:成功企業の「選択と集中」とアイデンティティ
②アイデンティティをブレさせることなく時流適応している
第二の条件は、「時流適応」を実践している点です。時流適応とは、いわば「やり方」の部分であり、時代にあわせて柔軟に変化させるべきものです。
例として挙げられるのが、医療の現場です。
例えば、かつての「がん」の手術といえば、患部を大きく切開するため、大変な痛みや出血を伴うものだったそうです。しかし現代では数センチの小さな穴からカメラと器具を入れて行う、腹腔鏡・胸腔鏡手術が標準的となりました。
そんな時代に、「旧式の痛みの大きい手術」と「現代の痛みの少ない手術」を選べるとしたら、患者は間違いなく後者を選ぶはずです。
時代が変わっても「医者が患者を助ける」という原理原則は、保ち続けなければなりません。一方で手法は時代ごとに変わっていきます。均質化と時流適応の違いはそこにあります。
③エッセンシャル思考を徹底している
第三の条件は、時流適応のために「選択と集中(エッセンシャル思考)」を徹底している点です。
やるべきことに対して、やると決めたら一気にリソースを投下する本気度が、社内外を巻き込む強い求心力を生み出します。
今回、これら3つの条件を実践している、成功を収めた会社の実例をご紹介いたします。

ケース①「街を美しくしたい」で300億円化
1社目は、関東の建設会社です。同社の社長は、創業以来「生まれ育った地元の街を美しくしたい」という強い想いを抱き、100億円企業化を達成しました。
そんな社長がいま目指しているのが、300億円企業化です。その理由は「年商100億円程度では、行政は本気で話を聞いてくれない。しかし300億円の規模になれば、自分が本当にやりたい街づくりに対して発言力が生まれる」というものでした。
同社は時流適応を図るべく、住宅から「街づくり」への事業規模拡大を見据え、工場、介護施設、事務所、店舗など非住宅領域への参入を進めています。
その際、木造だけでは不十分だと判断するや否や、一気に資金を投入しました。採用強化に際してはPMVV(パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー)を策定し、理念をわかりやすく言語化した上で求人サイトを刷新。鉄骨工法に対応できる職人をヘッドハンティングしました。
この会社がスゴイのは、こうした新規事業を次々立ち上げても、社員が振り回されていない点です。
同社の事業は「街を美しくする」というアイデンティティが一貫しているため、社員は大きな混乱なく受け入れられるのです。

新規事業に参入する企業の中には、経営者が「儲かりそうだから」と自社に合わない事業に手を出し、失敗する例も見られます。しかし事業の「軸」がブレなければ、社員はしっかりついてくると教えてくれる事例です。
ケース②「自慢したくなる家」で売上高倍増
2社目の事例は、北関東を商圏とする注文住宅会社です。同社の会長は、「自慢したくなる家を造る」という強い想いを常に抱いていました。
「自慢したくならなきゃ、意味がない」
この会社の原理原則が表れたエピソードがあります。

ある時、同社は障害者向けのグループホームを建てることになりました。多くの場合、福祉施設では機能性を重視し、外内装などのコストは抑えるのが一般的です。折しもコロナ禍で市場が落ち込み、安売りに走る競合も増えていました。
しかし当時の社長(現会長)は、こう断言しました。「儲かるかなんて関係ない、障害のある方が友達に自慢したくなる、かっこいい家でなければダメだ」。
結果、広く明るく、自慢したくなるようなグループホームは地元で評判となり、同社は地域トップクラスの施工件数を誇るようになりました。
時流適応も徹底しています。社長が非住宅領域への参入を決断した際、住宅部門のエース人材を非住宅事業に異動させるという大胆な人事を行いました。結果、「この社長は本気だ」という姿勢が社内外に伝わり、金融機関や取引先も巻き込む追い風となったのです。
2020年時点で売上高約10億円だった同社は、5年で約20億円にまで急成長しています。
ケース③デンマーク流の「原理原則」本気で環境に向き合う世界ブランド
そして3つ目は、海外の企業を例に挙げます。デンマークの世界的な家具ブランドであるフリッツ・ハンセンです。
まず、デンマークという国について簡単にご紹介します。
現在のデンマークは、九州ほどの面積に約600万人が暮らす小さな国です。14世紀末から16世紀初頭にかけては北欧の盟主として存在感を発揮していましたが、1864年の戦争でプロイセン(現:ドイツ)に敗戦し、約4割の人口と肥沃な国土を喪失した歴史があります。
その歴史から、国民レベルで「小国の我々が生き残るにはどうしたら良いか」という発想を持っています。まず国内だけでは経済が成り立たないため、グローバル市場で勝つべく、無駄を省いて勝てる分野にリソースを集中させています(エッセンシャル思考)。そして、環境問題や人権問題などの分野で世界をリードする「時流適応国家」になりました。
【事例:デンマークの椅子が軽いのは、「環境を守り抜く」理念があるから】
こうした国の在り方を象徴する企業が、フリッツ・ハンセンです。
同社は、非常に軽くコンパクトな椅子を作っています。デザインに凝っているだけではありません。椅子を軽くすることで輸送時の燃料消費や排気ガスを抑え、環境負荷の削減につなげる狙いがあります。

この「環境を守り抜く」という理念こそが、彼らのアイデンティティです。スタッフ全員が「エネルギー消費を抑えて環境を守ることが、国の生存につながる」と本気で信じています。
このアイデンティティがブレないからこそ、「いかに軽く、かつ美しく丈夫に作るか」という明確な目的が生まれ、職人やデザイナー(=資源の乏しい国における唯一の「資源」)の能力が最大限に引き出され、世界的なブランドとして評価されているのです。
「侍精神」がアイデンティティになる
視点を日本に戻します。フリッツ・ハンセンのアイデンティティが「環境」だとしたら、日本企業の場合は何になるのでしょうか。
1つの解だと言えるのは、島国ならではの「侍精神」です。
これまでお会いしてきた成功企業を経営している皆様からは、「侍精神」を感じます。
【侍精神とは】
- 恩義に報いる
- 自分だけのためではなく、全体のために働く
- 自分の国や地域のためにできることをする
といった心です。
他社や他国でもできる、均質化されたやり方で勝負するのではなく、「自分がこれをやる理由」を、侍の精神とともに企業や商品で追求する。それが結果として、社員や取引先の心を動かすのではないでしょうか。
