デキる社長が実践する"経営の選択肢"の増やし方
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2026.10.04
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- 売上の多くを特定の大口顧客1社に依存する経営は、安定や効率化につながる反面、相手の業績や発注量に左右され、自社でのかじ取りが難しくなる側面もあります。本記事では、船井総合研究所の外山智大が、1人あたりの粗利を高め、経営の選択肢を増やすための実践ポイントを解説します。
解説:船井総合研究所 外山智大
INDEX
特定の顧客だけと付き合うメリット・デメリット
BtoB企業において、売上の8〜9割を特定の主要顧客1社が占めるケースは珍しくありません。
長年密接なお付き合いを続けることにはメリットがあります。相手の品質基準や業務フローを熟知しているため、営業やすり合わせのコストをかけずに高い生産性を発揮できるからです。安定した基盤があるからこそ、新規開拓を行わずに経営を続けている企業も多いでしょう。
しかし、特定の1社に依存し続ける構造には、経営の選択肢を狭めるリスクが潜んでいます。多くの経営者様をご支援する中で直面するのは、主に以下の3点です。
コスト高を吸収する「価格交渉」の難しさ
「関係がこじれて取引全体を失うのではないか」という懸念が先立ち、価格交渉に踏み切れません。結果、原材料費や人件費の高騰分を自社で飲み込まざるを得ず、利益率が慢性的に低下します。
相手企業の「波」に経営がダイレクトに連動する
発注量は顧客の都合で決まるため、「ある時期は案件がなく、翌月はパンクする」といった繁閑の波を制御できません。過度な現場負担や、生産性の低い時期が生じてしまいます。
自社の利益を損なう「低利益・高負荷案件」を断れない
主要な取引関係を維持するため、「手間がかかる割に利益が出ない案件」も引き受けざるを得ません。その結果、最も優秀な社内リソースが低利益な仕事に固定化されてしまいます。
もちろん現在の安定した取引を手放す必要はありません。しかし、5年・10年先を見据える社長の多くは、業界変化に柔軟に対応できるよう「既存取引を守りつつ、経営の選択肢を広げる準備」を進めています。
成功する社長が目指す「1人あたりの粗利を増やす経営」
特定企業への依存リスクを回避し、自社で経営のかじ取りを行うために、成功する経営者はどこに目を向けているのでしょうか。それは、売上規模ではなく「社員1人あたりの粗利をいかに増やすか」を判断基準に置いているという点です。
「1人あたりの粗利」を高める意識を持つと、経営の視界は大きく変わります。
十分な粗利が確保できていれば、特定の1社と付き合い続ける形でも、高い給与を還元し、設備投資へ回す余力が生まれて「強い会社」でいられます。反対に、粗利を増やす意識を持てば、「不採算案件を断る」「根拠を持って価格交渉をする」「強みが生きる新規顧客を探す」といった選択肢が生まれ、過度に依存しないバランスの取れた経営体制をつくれます。
高利益体質へ変革を果たす社長は、常に次の問いを持って意思決定をしています。
「今いる社員数で、1人あたりの粗利をどう最大化するか?」
「自社のリソース(時間・設備・人材)に対し、十分な利益を生んでくれる案件か?」
目先の売上高ではなく「1人あたりの粗利」を経営の羅針盤に据えること。これこそが、特定企業の都合に振り回されず、自社で選択肢を増やすための根本的なアプローチです。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ 粗利を増やす「3つの具体的施策」
☑ ポートフォリオを分散させる「引き合い型の仕組み化」
☑ 根拠を持って価格交渉に臨むための「値決め」のポジション確立
粗利を増やす「3つの具体的施策」
「1人あたりの粗利を増やす経営」へ転換するために、具体的に何をすべきか?私が現場でご支援する中で、大きな成果を出している「3つの具体的施策」を解説します。

施策1:強みが生きる「新規顧客」を開拓し、ポートフォリオを分散させる
「取引先を分散すべきだ」と分かっていても、既存顧客に最適化された現場を考えると容易ではありません。
そこで重要なのが、力技の飛び込み営業ではなく、リスクを抑えて顧客を分散させる「引き合い型の仕組み化」です。成功企業は以下の3ポイントを実践しています。
- ①自社の「コアとなる強み・技術」を言語化する:自社では当たり前の技術やノウハウが、他の市場・まだお付き合いをしていない顧客にとっては喉から手が出るほど欲しい解決策になるケースがあります。まずはリソースを客観的に棚卸しします。
- ②売り込むのではなく「技術課題の解決策」を発信・提示する:自社の強みを必要としない相手に営業しても主導権は握れません。Webや事例集で「解決できる困りごと」を発信し、相談が来る状態(引き合い)をつくります。
- ③「100%対応できる案件」だけに絞らない:最初から既存事業と100%合致する新規案件はありません。「強みの応用で対応可能か?」「自社の成長につながるか?」を基準に、多少のストレッチをかけて受託していく姿勢がスキルと幅を広げます。
施策2:ロボットやツールの活用、業務の標準化で「生産性」を向上させる
次に取り組むべきは、今いる社員で生産性を最大化する仕組みづくりです。
職人の手作業依存で長時間残業が慢性化していたある企業では、作業ロボットの導入を決断しました。ここでのポイントは、目的を「人員削減」ではなく「今いる社員で1人あたりの生産性を1.5倍に引き上げること」に置いた点です。
結果、残業代を含む労務費が抑えられ、生まれた利益を社員の賞与や昇給へ還元できるようになりました。労働時間が減り給与が上がるという、経営者・社員双方にメリットがある好循環モデルです。
生産性を上げる手段は大型機器だけではありません。5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底や、紙情報のデータ化・共有化による「タクトタイム(工程時間)」の短縮も非常に有効です。
施策3:「値決め」ができるポジションを確立し、根拠を持って価格交渉に臨む
3つ目は、言われた条件を受けるのではなく、自社で「値決め(適切な対価の主張)」ができるポジションを取ることです。
昨今の原材料費や人件費の高騰を適切に価格へ反映できれば、1人あたりの粗利は一気に向上します。ここで不可欠となるのが、正確な「原価データ」です。「この案件にこれだけのコストがかかっている」という客観的な数値を示せれば、テーブルで対等に交渉できます。
ただし、感情論やデータの準備だけでは強気に出切れないこともあります。交渉を支える最大の裏付けこそが、施策1の「顧客分散」です。
特定顧客への依存度が高いと「取引を失ったらどうしよう」という恐れが勝ち、交渉を躊躇してしまいます。逆に複数の柱を持ち、「最悪の場合、採算が合わない案件はお断りする」という選択肢を持っている経営者こそが、恐れず対等かつ強気に交渉へ臨めるのです。
専門家をうまく活用し、持続的な成長を目指す

新規開拓や業務改善を社内リソースだけで進めるのは容易ではありません。手探りでコストと時間をかけるより、外部の専門家の知見を借りることが最短ルートです。
成功する社長は、すべてを自分一人で抱え込みません。実務は専門家に任せつつ、「自社にとって本当に必要か?」という判断に集中しています。
そして、増えた粗利を社員へ適切に還元することで、現場のモチベーションが上がり、さらなる生産性向上につながる「好循環」が生まれます。
外部の力を賢く借りて現場の粗利を伸ばし、その成果を還元して会社を成長させる——この仕組みを整えることこそが、10年先も生き残る強い会社をつくる鍵となります。
「選択肢」を持つことが、強い経営をつくる
1社依存からの脱却とは、長年お世話になった主要顧客との関係を断ち切ることではありません。真の目的は、自社が「経営の選択肢」を持ち、対等で健全なパートナーシップを築くことにあります。
「売上高」という規模だけを追いかける経営から脱却し、「1人あたりの粗利」を経営の羅針盤に据え直すこと。自社の強みを再定義し、外部の力も賢く借りながら小さな改善を積み重ねていくこと。そのプロセスを通じて手に入る「いつでも自社で選択できる」という自由度こそが、不確実な時代において会社と社員を守り抜く最大の武器となります。
