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半年で売上を2倍にした専門特化の経営戦略

2026.06.28
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半年で売上を2倍にした専門特化の経営戦略
顧客を増やしたければ、ターゲットを広く設定すべき――。特に創業初期のころは、「一日でも早く経営を安定させたい」という気持ちから、顧客を選ばずサービスを展開しがちです 。さいたま市浦和区で「かどひら内科・循環器内科」を営む院長・門平忠之氏は、循環器内科の専門医としてキャリアを重ね、同院を開業 。当初は花粉症や風邪などの一般内科患者を対象に診療していましたが、売上が頭打ちになってしまいます 。その後、「専門である循環器内科への特化」へと舵を切ってから、半年で売り上げは2倍に 。手広く診療するのではなく、専門特化することで業績を向上させました 。開業当初の門平院長が抱えていたのは、3つの思い込み 。これらの思い込みを捨て、売上を倍増させるきっかけとなった「絞り込み戦略」について解説していきます 。

執筆者:船井総合研究所 吉嶺菜穂

INDEX

院長の思い込み1:品質が良ければ自然と顧客は増える

門平院長は大学卒業後、循環器科の専門医として大学病院や警察病院に勤め、心臓病や高血圧などの治療を手がけていました。勤務医としての働き方にひと段落つき、後輩も育ってきたことから一念発起して開業を決意。2013年、さいたま市浦和区に同院を開業します。

開業前、同業の先輩医師や開業セミナーの講師からは「内科の患者は口コミで増えるもの。真面目に診療していれば自然と患者数は増えていく」と聞いていたといいます。そこで門平院長も「真摯に診療に向き合っていれば、経営は自然と軌道に乗るだろう」という見通しを持っていました。

そして実際、開業当初(10月)以降の4か月間は、風邪や花粉症患者が増える季節的な要因もあって、業績は順調に上昇。しかし開業から半年が過ぎ、思うように患者数が伸びず、横ばいの状況が続きました。近隣に競合となる内科が相次いで新規開業したこと、商圏内に競合が林立した結果、患者さんの取り合いになり、売上の伸び悩みにつながっていました。

「真摯な診察(良い商品やサービス)を提供していれば、患者(顧客)は増える」というアプローチは、競合が少ない状況では有効ですが、市場が成熟しており競合が多いと大きな効果は得られません。

それどころか、競合との明確な違いを打ち出せないと、立地や価格競争に巻き込まれる可能性が高く、消耗戦となるリスクがあります

院長の思い込み2:ターゲットを拡大すれば顧客は増える

もともと循環器疾患の予防医療を志して開業した門平院長は、「なんでも診る」ことで患者を増やし、それがゆくゆくは「理想である専門医療(循環器疾患の予防医療)につながる」と考えていました。

そのため、Webサイトのトップページには、一般内科患者を誘致する文言を載せ、花粉症や風邪の患者さんに対してアプローチしていました。そして、患者数が伸び悩むようになり危機感を持ってからは、「もっと手広く診察しなくては」と、これまで以上に一般内科患者を増やす取り組みに注力していきます。

サービスのラインナップ拡充、インフルエンザや新型コロナウイルス以外のワクチン接種の開始、患者さん向けの院内健康セミナーの開始、少額のGoogle広告、バス広告――しかし、結果として経営リソースは分散。明確な成果が得られないまま、日々が過ぎていきました。

そんなあるとき、「開業2年目で月間売上1,000万円を達成したクリニック」の存在を知ります。それが医療法人一悠会寺田クリニック(栃木県小山市)でした。同院は、発熱外来中心の集客から専門である生活習慣病の治療に特化し、ホームページやWebマーケティングを最適化したことで、患者数を急増させた実績を持っていました。

「この事例を通じて、差別化の重要性を実感しました。そこで、私の専門である『生活習慣病』に特化することを決めたのです」(門平院長)

門平院長は、寺田クリニックの事例を知ったその日に、ホームページのメインメッセージを「生活習慣病+心臓病」に刷新。誰にでも向けた「総合内科」から、自社のコアコンピタンスである「生活習慣病および循環器疾患の専門外来」へと軸足を移していきました。

診療科目の差別化にともない、集客方針も転換。「専門性特化」へと切り替えた翌月には、患者数が過去最高を更新しました。商圏外かと思われていた隣接の区からも患者さんが訪れるなど、想定以上の成果がありました。

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▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。

☑ 【テーマ1】思い込みを排除したWebマーケティング成功の舞台裏
☑ 【テーマ2】専門領域特化による現場オペレーションの効率化と生産性向上
☑ 【テーマ3】外部の経営資源・専門家の知見を活かした組織成長戦略

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院長の思い込み3:お客様像の決めつけ

患者数が増えた大きな理由、それはWebマーケティングの成功でした 。それまでは、Google広告をはじめとしたWeb集客に懐疑的だったという門平院長 。というのも、患者さんの多くは70代〜80代なので「ネットを介した情報は届きにくいのでは」と想定していたからです。

しかし実際に来院する患者さんからは、「ネットで検索をして認知した」「ホームページに『心臓病専門』と書いてあったので」という声が少なくありませんでした 。また、「専門志向」の強さも想定外だったといいます。

「多少の距離があっても専門医に診てもらいたいと考えている患者さんも多くいました。これも専門分野に絞ってみて分かったことのひとつです(門平院長)

年齢層を問わず、健康や金融といった人生に直結する悩みや課題は、より専門性の高い解決策を求めて情報収集をする傾向にあることが分かっています。適切なチャネルで強みを提示できれば、商圏自体の拡大も可能になります。

やることを絞ると、生産性も向上!

専門領域への特化は、売上の改善だけでなく、現場オペレーションの効率化という側面でも大きなメリットを生み出しました。

患者数は増えましたが、業務的な負担はそれほど多くありませんでした 。というのも、多角的な症状に全方位で応えようとしていた時期は、症状ごとに診察や検査内容が異なり、現場に負荷がかかっていました 。一方、専門に特化した後は、同じような症状の患者さんが増えたため、効率的に診察できるようになりました(門平院長)

また、患者さんがネットを使いこなしていることが分かったので、ネットでの予約システムも導入 。一度に診察する人数を平均化することで、より丁寧に、より効率的に診察できるようになりました。これにより、突発的に現場に負荷がかかることを抑止し、患者数が増えてもスタッフが疲弊しない現場づくりを実現しています。

「餅は餅屋」専門家の意見を取り入れることの重要性

それから現在まで、同院の経営は堅調に推移 。1日の平均来院数は70〜80名を維持し、そのうち専門疾患である生活習慣病・心臓病の患者さんが6割を占めているのだといいます。

この水準を維持できている理由について、門平院長は「一回一回の診察を丁寧に行うこと」だと話します。多忙な中でも診察品質を落とさないために、振り返りの時間を毎週必ず設定 。スタッフの意見を募ったり、自省する時間を設けています 。また、一連の構造改革に通じるのは「餅は餅屋」という考え方です。

目の病気は眼科に、耳の病気は耳鼻科に――医師に専門性があるように、私たちは病気の専門家ではありますが、経営の専門家ではありません 。自分自身の専門領域でないことは、専門家に意見を聞くべきだという考えが強くなりました(門平院長)

この「適材適所」の考え方と、外部経営資源を活用する姿勢が、かどひら内科・循環器内科の業績を向上させた大きな要因といえるでしょう。

関わる人全員の利益最大化へ向けて

現在、同院が経営の軸に据えているのは、「関わる人(顧客、従業員、地域社会)全員の利益の最適化」です 。

患者さんに高水準のサービスを提供するためには、まず第一線で稼働してくれている従業員のエンゲージメント向上が不可欠です 。経営理念にも掲げていますが、従業員の『物心両面の環境整備を行うこと』は、経営者としての基本的な姿勢であるべきだと考えています(門平院長)

かどひら内科・循環器内科には、現在11名のスタッフが在籍していますが、年に一度、経営方針発表会を行っています 。今後の事業展開として、地域の健康を守るため、訪問診療の拡充や分院展開を予定していると発表したところ、それを聞いた従業員の数名が「新プロジェクトに参加したい」と申し出てきたのだといいます。

「こうして仕事に前向きなスタッフがいるのは、非常にありがたいことです」(門平院長)。トップダウンの意思決定に留まらず、組織全体に当事意識が浸透していることを示す動きです。

さらに、地域社会への貢献活動として、定期的な院内健康セミナーも続けています 。「地域における貢献度を高めていきたいと考えていますが、その最適な指標については、現在も模索を続けている段階です」と、門平院長は話します。

外部の知見を取り入れ、自社の先入観を排し、オペレーションを仕組みによって担保し続ける。この現状分析と、経営環境の変化に柔軟に対応する姿勢が、同院の安定的な成長を支える強固な基盤となっています。

<取材協力>

クリニック名: かどひら内科・循環器内科

代表者: 門平忠之

所在地: 埼玉県さいたま市浦和区領家4-12-6

開設: 2013年10月(※本文の記述に合わせ「設立」から「開設」へ変更、および西暦を整合)

診療科目: 内科・循環器内科(生活習慣病、心臓病、睡眠時無呼吸症候群等)

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