なぜ「優しい社長」の会社ほど、指示待ち社員ばかりになるのか?
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2026.06.29
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- 今回の記事は、2026年1月発行後、早々に重版が決定した話題の書『部下の心を動かすリーダーがやっていること』(著:上林周平)をピックアップ。本書に記された、今の時代に求められる「マネジメントの型」と「メンバーの意欲を引き出す3つの方法」について、その要点をまとめてお届けします。
執筆者:上林 周平(原著者)
INDEX
あなたは大丈夫?マネジメントの型をチェック!
部下の心を動かすリーダーは、まず目の前の部下のことをよく知り、小さな共感ポイントを職場に増やしていきます。マネジメントにおける共感とは、相手と感情や価値観を重ねられる接点を見つけて、行動に導くための技術です。 (「はじめに」より抜粋)
部下が動かない、組織が変わらない。その背景には、時代や働き方の変化に合わせて、経営者自身の「マネジメントの型」がアップデートされていないという根本的な原因があります。
よく見られる、現代のニーズに応えられていないマネジメントスタイルは次の2つです。
クールな監督者…「割り切り型マネジメント」
これは役割と仕組み、および結果に徹底的にフォーカスするスタイルです。
● 特徴: 細かく役割を分担し、期限を厳守させ、達成責任を強く持たせる。プロセスには口を出さず、未達であれば「次はどう挽回するのか」と論理的に詰める。一方で、達成しても過度に褒めることはありません。
● リスク: 基本的には「理屈のオンパレード」。合理的ではありますが、社員の「内発的動機(自らやりたいと思う気持ち)」が育ちません。短期的には数字が出ても、長期的には指示待ち人間ばかりが増え、組織が硬硬直化する危うさがあります。
優しい保護者…「迎合型」マネジメント
割り切り型とは対極にあり、制度や環境づくりに力を入れるスタイルです。
● 特徴: 残業削減、有給消化、ハラスメント対策などに細心の注意を払う。
● リスク: 「働きやすさ」を整えても、それが必ずしも「働きがい」には直結しません。日経リサーチの国際比較調査では、日本の社員は「休暇の取りやすさ(51%)」を評価する一方で、「成長実感や働きがい」は40%にとどまっています。社長が社員に「嫌われないこと」を優先しすぎると、ぬるま湯組織になり、肝心の業績や個人の成長が止まってしまう最大の罠に陥ります。
心を動かすリーダー……「共感型」マネジメント
「割り切り型」も「迎合型」も利点はある一方で、労働観が多様化した現代のニーズには応えられていません。そこで効果的なのが「共感型」マネジメントです。
「共感」とは、小さなこと、ささいなことからでもお互いの考え方や価値観を知り、少しでも重なり合う部分を見つけることです。そうして信頼関係を築いていくと、感情を素直に交換することができます。近年、心理的安全性が注目されているのも、信頼関係を築く土台だからです。
「共感する力」と「共感してもらう力」

共感型マネジメントを目指す際、「相手の話を聞かなければ」と身構えてしまうかもしれません。しかし、共感には「共感する力」と「共感してもらう力」の両輪が必要です。
- 共感する力: これは、部下が「どんな経験をしてきたのか」「どんな価値観で働いているのか」を感じ取ろうとする姿勢です。表面的なスキルの有無だけでなく、「なぜ彼はここで頑張っているのか?」という背景に興味を持つことです。
- 共感してもらう力: 自分の考えや想いを相手が納得できる形で伝える力です。共感は一方通行では成り立ちません。一方的に指示を出すのではなく、なぜそれを大切にしているのか、どんな思いで判断しているのかを言葉にする。そこに自分の軸や本音があるほど、相手は共鳴しやすくなります。
「言わなくてもわかるだろう」「背中を見れば伝わる」という考えは、今の時代にはリスクです。社長が「なぜこの事業をやっているのか」「なぜ今、この厳しい判断をしたのか」を、部下が受け取れる言葉で語る必要があります。
心を動かす鍵は「心理的所有感」
「好きなアーティストを応援する」「お気に入りのグッズを集める」といった、いわゆる「推し活」。この心理こそが、共感でつながる組織づくりのヒントになります。
「推し」を応援するファンは、頼まれなくても熱心に活動し、その対象を「自分のこと」のように大切に思っています。この状態を支えているのが、「心理的所有感(対象を自分の一部と思うこと)」です。
心理的所有感を生む「3つの要素」
- 【統制】…自分の意思で関われている、という感覚
- 【知識】…相手や対象のことをよく知っている、という理解
- 【投資】…自分が時間や労力、気持ちを注いできた、という実感
これら3つが揃ったとき、社員は会社や仕事を「与えられたタスク」ではなく、「自分たちの場所・仕事」だと感じるようになります。リーダーの役割はこの「心理的所有感」をいかに職場にデザインするかにあるのです。
「統制」で社員の意欲を引き出す
それでは、実際に心理的所有感を生み出す要素の一つである「統制」を意識して、従業員の意欲を引き出す方法を見ていきます。
「統制」といっても、リーダーが部下をコントロールすることではありません。むしろ逆で、「部下が自らの意思でコントロールできる範囲」を広げてあげることです。
この統制を育てるには、情報・対話・参画という3つの土台が欠かせません。
- 情報のオープン化: 会社の情報をできるだけオープンにすることで、メンバーは「今、何が必要か」を正しく理解し、自分の頭で判断して動けるようになります。
- 対話の場の設計: 自分の意見が届く場があることで、職場を「会社から与えられた場所」ではなく「自分たちでつくる場所」へと認識が変わります。
- 参画の仕組み: 自発的に関われるチャンスがあることで、組織における自分の存在意義を肌で感じるようになります。
これらを踏まえ、「心理的所有感」を高め、メンバーの意欲を爆発させる具体的な「3つの方法」を順に紐解いていきましょう。
①「職場のスケルトン化」を意識する
「チームが今、どんな状況なのかよくわからない」「結局、社長は何を目指して走っているのか見えづらい」こうした不透明さは、社員が主体性を失う最大の原因です。人間は本能的に「見えないもの」に対しては慎重(あるいは臆病)になり、思い切った行動ができなくなるからです。
そこで鍵となるのが、次のような「情報アクセスのオープン化」です。
- オープンなコミュニケーション: グループチャットなどは原則公開設定にし、誰がどんなプロジェクトで動いているかを可視化する。
- 数字の共有: 月次の成果報告を全社員に公開する。特に重要なのは、社長自らが「今、会社はこういう状態だ」という生の声を発信し続けることです。
- 多角的な評価: 360度サーベイなどを通じ、上司からの一方的な視点ではなく、複数の視点から自分や周囲の立ち位置が見える設計にする。
もちろんこれらは珍しいものではないですが、重要なのは社長の意識です。「情報は隠すものではなく、正しく動くために共有するものだ」という文化を社長自らが体現する。この覚悟があって初めて職場は「スケルトン化」し、社員は自律的に動き始めます。
②部下の「関与スイッチ」を入れる

職場における「心理的所有感(自分の会社だという感覚)」を最大化させるために欠かせないのが、「自分の意見が反映されている」「会社の未来に自分も関わっている」という実感です。
指示を待つだけの「受け身の社員」を、自ら動く「当事者」へと変えるには、彼らの「関与スイッチ」をオンにする必要があります。
「発表の場」を「対話の場」へ
具体的には、全社会議やミーティングのあり方を少し変えてみることです。
● 実践例: 新しい人事制度の導入や、組織カルチャー(行動指針)の策定において、経営陣が決めたことを「発表」するだけで終わらせない。
● 对話の設計: 「この方針について、現場の視点からどう思うか?」「もっと良くするためのアイデアはないか?」と、意見交換の場をあえて設けます。
現場から声を上げてもらい、実際にその一部が制度や方針に採用される。このプロセスを経て初めて、社員の中に「この組織は自分たちがつくっているんだ」という感覚が芽生えます。
③意見収集を「常設化」させる

「一度意見を聞く場を設けたけれど、大した意見が出なかった」「その時は盛り上がったが、結局いつもの日常に戻ってしまった」こうした悩みは、意見収集が「一過性のイベント」で終わっていることが原因かもしれません。社員の「心理的所有感」を本物にするには、「いつでも意見を言える、そしてそれが届く」という状態を常設することが不可欠です。
「場」を定例化する3つのアプローチ例
一時的な「気づき」で終わらせないために、以下のような「場」を経営サイクルの中に組み込みます。
- 会議の「議題」に組み込む: 毎月の会議で、業務報告だけでなく「経営や人事制度に対する意見・視点の交換」のための時間をあらかじめ確保しておく。
- 定期的な「経営トーク」の開催: 社長と現場メンバーが直接対話する機会を定期開催し、「社長に意見を言ってもいいんだ」という心理的に安全な空気を根付かせる。
- 部門を越えた「課題共有会」: 役職や年齢を問わず、異なる部門のメンバーが集まり、現場の困りごとを共有し合う場を作る。
「意見を言える場」が常にそこにある。これらを継続することで、メンバーの意欲が引き出され、自発的に動くようになります。
共感型マネジメントはAIに奪われない
いま、経営の現場にも急速にAI(人工知能)が浸透しつつあります。確かに、データを分析し、現状を正確に「見える化」する力において、AIは圧倒的です。
その数字に「意味」を与え、背景にある社員の感情を読み解き、彼らの心を動かすことは、AIには絶対にできません。それができるのは、血の通った経営者だけです。
今回ご紹介した3つのアプローチは、どれも明日からすぐに実践できるものばかりですが、これらは本書に詰まった智慧のごく一部に過ぎません。
上林周平氏の『部下の心を動かすリーダーがやっていること』には、リーダーとして持つべきマインドセットから、社員との深い相互理解を築くためのより具体的な方法など、現代のマネジメントに必要なエッセンスが凝縮されています。
☞ 本記事の参考図書
『部下の心を動かすリーダーがやっていること』
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