わずか10年で業界トップになれたシンプルな理由
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2026.08.08
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- 市場が縮小する逆風下で、わずか10年で拠点を10倍以上に急拡大させた経営者がいます。なぜ、これほどの成長を遂げられたのか。商品力・サービス力はあるのに伸び悩む組織を打破するヒントは、組織全体の「やりきる力」にありました。その成長の裏側にある組織論を解説します。
解説監修:船井総合研究所 柴崎智弘
執筆:船井総合研究所 平田賢司
INDEX
「知ってはいる」が「やらない」仕事
私が思い浮かべる「成功する社長」は、多くの事務所が市場縮小に苦しむ税理士業界において、わずか10年で拠点を10倍以上に急拡大させた経営者です。
その経営者との出会いは、私が講師を務めていたセミナーでした。当時の業界セミナーでは、限られたパイを奪い合う「客数の増やし方」が主流でしたが、私は全く異なる戦略を提唱していました。それは、客数ではなく「顧客生涯価値(LTV)」に着目し、税務に生命保険の提案を付加することで一社あたりの単価と満足度を最大化するアプローチです。
この戦略自体は税理士にとって決して珍しいものではありません。しかし、知識はあっても顧客にどのように提案すればいいのか分からないという「スキルの壁」と、本業以外の提案で万が一にもクレームを招くリスクを極端に嫌う「保守的な心理の壁」があるため、多くの人が避けて通っていました。つまり誰もが有効性は理解していても、面倒がって手を出さない。ここには、まさに巨大なブルーオーシャンが広がっていたのです。
このチャンスに、参加者のなかで誰よりも早く「まさにそういうことがやりたかったんだ」と強く食いついてきたのが、その社長でした。
突出した「やりきる力」
その社長も以前から生命保険の提案は行っていましたが、私の提唱するモデルを採用すれば、自社の実績からさらに10倍以上に伸ばせるということに気付かれました。
「まさにこれをやりたかった」という彼の一言は、今でも鮮明に覚えています。
当時、私のセミナーには彼を含めて約50人の受講者がいましたが、全員が同じ情報を聞き、同じチャンスがあることを知ったはずです。しかし、そこで得たアイデアを実際に形にし、継続的な成果へとやりきったのはその社長だけでした。
多くの経営者は、新しい情報を集め、戦略を練ることには非常に熱心です。しかし、いざ実行に移すと、成果が出るまでの苦しい時期に息切れしてしまったり、途中で断念してしまったりすることが少なくありません。しかし、彼はその「実行の壁」を、驚異的な「やりきる力」で突き抜けたのです。
「やりきる個人」から、「やりきる組織」へ
さらに、この社長が事業を大きく拡大できたポイントは、自分自身が「やりきる」ことだけに留まらなかった点にあります。その社長は組織全体に施策を完遂させる、つまり社員に「やりきらせる」仕組みを構築する力がありました。
どれほど優れた経営者であっても、個人の実行力には必ず物理的な限界が訪れます。しかし、自ら決断した戦略を社員一人ひとりに浸透させ、組織全体で完遂できる仕組みさえあれば、成長のスケールは桁違いに跳ね上がります。
この「やりきる組織」を支えていたのは、拠点の急拡大に合わせて実践された、独特な権限移譲のプロセスでした。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ M&Aによる急拡大を支えた段階的な権限移譲
☑ 「サービス業」としての本質を突き詰め、組織をスケールさせる
☑ 挑戦を望む人材だけが残る「スクリーニング」
M&Aによる急拡大を支えた段階的な権限移譲

一般的に、士業の事務所がM&Aを行うと、わずか数件の買収でも統合プロセス(PMI)の負荷に耐えきれず、経営者が疲弊してしまうケースがほとんどです。しかし、彼はその壁をものともせず、圧倒的なスピードで拠点を増やし続けました。これを支えたのが「3段階の権限移譲」です。
その社長は拡大のフェーズに合わせて役割を明確に分担させていました。
【実践プロセス】3段階の権限移譲
- 立ち上げ期:最初の数件は、社長自らがすべての実務を担い、成功の型を構築する。
- 拡大期:蓄積したノウハウを数名の幹部に継承し、実務の実行を委ねる。
- 加速期:幹部がさらに下のメンバーを育成・管理し、組織全体で自律的に動く体制へ移行する。
このプロセスを確実に徹底できたことで、組織としての実行力が複利的に高まっていきました。
何より卓越していたのは、「要所はトップが締め、実務は信じて委ねる」という姿勢を徹底できていたことです。経営者ともなれば、さまざまな面で細かく指示を出したくなるのは当然です。しかし、「任せるところは任せる」。部下を信じてこれができていたからこそ、組織を停滞させずに成長させ続ける唯一無二の経営力といえます。
「サービス業」としての本質を突き詰め、組織をスケールさせる

最後に組織のスケールを左右する「人材」へと話を移します。ここでも、独自の仕組みが機能していました。
税理士業界は、資格さえあれば少人数でも成立してしまうため、経営力やマーケティング力が後回しにされがちな世界です。しかし、多くの事務所が小規模に留まる中、彼が突出して成長できたのは、税理士業を「サービス業」として定義していたからです。
領収書の整理や決算書の作成といった、最終的な「成果物」自体はどこの事務所も大差ありません。しかし、そこに至るまでの対応品質やスタッフの人間力が、顧客である社長の満足度を決定的に分けます。
どれほど優れたサービスがあっても、それを届ける人材と組織に経営力がなければ、決してスケールすることはありません。彼は、属人的になりがちな士業のサービスを「組織としての付加価値」にまで高め、それを維持し続ける経営基盤を築き上げたのです。
挑戦を望む人材だけが残る「スクリーニング」

そして、その組織に意欲の高い人材だけが集まるために2つの仕組みを構築しています。
一つは、あえて「他社ではやらない業務」を徹底させることです。生命保険の提案など、本来の税務から踏み込んだ役割を社員に課すことで、営業マインドのある優秀な人材だけが残る自然な淘汰(スクリーニング)が働いています。その挑戦の対価として、若くして抜擢されたり、高い報酬を得られる環境が整っているのです。
もう一つは、資格の有無を問わず「実力に応じたポジション」を次々と用意することです。例えば、資格がなければ出世できないという士業の暗黙のルールを排除し、実力があればグループ会社の社長にまで登用する。この実力主義が組織の熱量を引き上げています。
他にも、安易に世の中の流行に迎合しない採用姿勢も重要です。昨今のリモートワーク推奨の流れの中でも、彼は「成果を出すことに貪欲な人」を何より優先し、安易に働きやすさだけを求める人材は採用していません。
自社が求める理想の人材像を明確にし、そこに妥協しない基準を貫く。この「徹底」こそが、やりきる組織をつくる採用戦略となっています。
成長を加速させる「学び」と「執念」

今回取り上げた成功する経営者もまた、常に学び続ける姿勢を崩しません。
「読書家ではない成功者はいない」と言われる通り、情報を素早くキャッチするアンテナと、それを即座に形にするフットワークこそが、競合との圧倒的な差を生む一つの要因だと思います。
税理士業界という「特殊な業界だったから成功できた」という本人の謙遜とは裏腹に、その手法はあらゆる業界で通用する普遍的なものです。
【まとめ】成功への3つのアプローチ
- 「誰もが知るが、誰もやりたがらない市場」を見つける:業界の常識を疑い、誰もが面倒だと避ける「空白地帯」にこそ商機を見出します。
- 「やりきる」から「やりきらせる」仕組みへ昇華させる:経営者個人の力に頼らず、段階的な権限移譲によって組織全体の実行力を最大化します。
- 「やりきりたい人材」が集まる基準を貫く:挑戦の機会とポジションを用意し、安易な流行に迎合せず、成果に貪欲な組織を設計します。
どの業界にも、誰も手をつけていない領域が必ず存在します。そこを特定し、組織として「やりきる」仕組みを構築できるか。それが、停滞を打ち破り、次なる成長を掴み取るための鍵となるはずです。
