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少子化時代を生き抜く「圧倒的危機感」と実践戦略

2026.06.06
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少子化時代を生き抜く「圧倒的危機感」と実践戦略

本記事は、船井総合研究所の長年コンサルタントとして教育業界の最前線に立ち続けてきた島崎卓也氏が考える「成功する社長の共通点」です。数多くの幼稚園経営を支援する中で見えてきたのは、突き抜けた成果を出す経営者ほど、変化する市場環境に対して「圧倒的な危機感」を抱いているということです。「今のままでは生き残れない」という真剣な危機意識を、いかにして組織を変革するエネルギーへと転換させていくのか。厳しい環境下でも持続的な成長を実現するための「経営者の覚悟」について、島崎氏が解説します。

INDEX

幼稚園業界が直面する「二重苦」


画像提供:PIXTA

どの業界も先行き不透明な時代ですが、今回例に挙げる幼稚園業界は、いま「少子化」「保育ニーズの変容」という、逃げ場のない二重の構造的不況に直面しています。

共働き世帯の急増により、現代の親がまず選択するのは、0歳児から預けられる「保育園」です。その結果、3歳児以降を主対象とする幼稚園は、単に「子どもの絶対数が減る(少子化)」だけでなく、「顧客が他業態(保育園)へ流出する」という、市場のパイの縮小とシェア奪い合いのダブルパンチを受けています。

「保育も教育も同じように厳しいのでは?」と思われがちですが、実態は異なります。制度やニーズの歪みに直接さらされている分、実は幼稚園の方がはるかに過酷な生存競争を強いられているのです。

圧倒的危機感がすべての原動力


幼稚園に限らず、他の業界でも「厳しい経営環境だよね」と経営者の多くがおっしゃるものの、そのどこかに「僕の代までは大丈夫」という”カッコ書きが入っている”印象を受けます。

多くの経営者が口では危機感を語りながら、心の底では「まだなんとかなる」と思っている。この「謎の安心感」が、変革を先送りにし、経営の先細りを招く要因の一つです。

市場の縮小を認識しながらも、抜本的な手を打たないまま時間だけが過ぎていく――この構造は幼稚園業界に限った話ではないはずです。

一方で、幼稚園業界のなかで”ずば抜けて成長している”経営者は、この「僕の代は大丈夫」という感覚が一切ありませんでした。

ここで注目すべきは、危機意識の「深さ」です。単に「厳しい」と感じるレベルではなく、「生き残るためなら何でもやる」というレベルまで腹が据わっている。この圧倒的な危機意識こそが、後述するすべての行動――勉強熱心さ、素直さ、大胆な事業展開――の原動力になっているのです。

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☑ 【常識の打破】なぜ成長する経営者は「中期経営計画」に縛られないのか?
☑ 【事業多角化のリアル】本業を守るために「M&A」に踏み切った果敢な挑戦事例
☑ 【組織の自走化】一人で抱え込まず現場に「任せる」ためのフェアな権限委譲術

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なぜ「中期経営計画にはこだわらない」のか


成長を続ける経営者ほど、意外にも「中期経営計画にこだわらない」と言います。この事実に驚かれる方も多いのではないでしょうか。

幼稚園や保育園といった教育・福祉事業は「制度ビジネス」という側面が強く、国の方針一つで事業環境がガラッと変わります。また、地域に根ざした事業であるため、解決すべき課題も日々刻々と変化します。

こうした環境下で、3年後の組織図や売上目標を綿密に固定しても、前提条件そのものが崩れてしまえば意味をなしません。むしろ、圧倒的危機感を持つ経営者は、計画によって自らの可能性を縛り、変化への対応を遅らせることを何より恐れます。

ただし、誤解してはいけないのは「計画がない」わけではないということです。法人を存続させ、発展させるという大きな方向性(コア)は、危機感に裏打ちされた強固なものを持っています。その上で、道筋を固定せずに、目の前に現れたチャンスや課題を柔軟に吸収していく。 「コアは外さず、手法は臨機応変に」。このスピード感ある経営判断の土台には、常に「今すぐ動かなければ生き残れない」という強烈な危機意識があるのです。

生き残るために「いいと言われたものはやる」


成功する経営者の行動原則は、驚くほどシンプルです。それは「いいと言われたものは即、やる」という実行スピードに集約されます。

例えば、2015年に「認定こども園」制度が新設され、政府が待機児童解消のために「企業主導型保育」を推進しました。この時、ある法人の経営者は「これは好機だ」と直感し、一気に3施設を新設しました。 この圧倒的な機動力の背景にあるのが、先述した「生き残るためなら何でもやる」というマインドセットです。

この経営者は「幼稚園」という本業に対する強い愛着を持っています。しかし同時に、幼稚園という既存モデルだけで発展し続けられるほど甘くないことも、誰より痛感しています。 だからこそ、「本業を存続させるために、収益の柱となるビジネスなら何でもやる」と腹をくくっているのです。

実際、この法人は他県の学校法人のM&A(買収)にも踏み切るなど、本業を死守するために、既存の枠組みを超えた挑戦を続けています。この果敢な一歩を支えているのは、やはり「現状維持は破滅」という圧倒的な危機感に他なりません。

経営者としての当たり前のマインド


幼稚園・保育園業界には、根強い「空気感」が存在します。それは、「私たちは教育という尊い仕事をしているのだから、経営を語るべきではない」という一種のタブー視です。

特にベテランの経営者ほど「教育と経営は別物だ」という認識が強く、経営視点を持ち込むことに拒絶反応を示すケースが少なくありません。子どもの数が増えていた時代にはそれでも通用しましたが、市場が縮小する現在、この思考停止は致命的なリスクとなります。

成功する経営者は、この幻想を明確に否定しています。 「教育・保育を充実させるためには、経営によって原資を生み出さなければ、環境投資も人材確保もできない」 当たり前のことのように聞こえるかもしれません。しかし、この「当たり前の危機感」を持って経営に臨んでいる経営者は、この業界では圧倒的に少数派でした。一般企業での経験がないまま家業を継ぎ、教育の世界に没入してしまうことで、ビジネス感覚を磨く機会を逸してきた構造的な背景があるからです。

どの業界であっても、「本業の専門性」と「経営」を切り離して考えている経営者は少なくありません。しかし、両者は対立するものではなく「本業の質を高めるためにこそ、経営がある」のです。この視点を持てるかどうかが、生き残りをかけた変革の第一歩となります。

「任せる」ためのフェアなコミュニケーション


外部人材を登用し、役割分担を徹底する。これが機能するか否かは、コミュニケーションの質に懸かっています。

成長を続ける組織には、共通して「フェアなコミュニケーション」が存在します。これは単に仲が良いという意味ではありません。経営者と職員がそれぞれの役割を自覚し、組織のために「言うべきことを言う」関係性のことです。

「生き残るためには、自分一人では限界がある」という圧倒的危機感を持つ経営者は、無駄なプライドを捨て、現場への権限委譲を断行します。

「私の役割はこれ。現場の責任者はあなた」と役割を明確に定義し、信頼して任せる。一方で、コアとなる幹部とは徹底的に向き合い、一人ひとりの特性に合わせた丁寧な対話(チューニング)を欠かしません。

従業員数が数百名規模になれば、経営者が全員を直接見ることは物理的に不可能です。だからこそ、階層に応じたマネジメントへと移行し、「社長が言うならやる。現場のやり方はこちらで考える」という自走する組織を作り上げるのです。

役割の違いを明確にした上でのフェアな対話。この積み重ねこそが、危機的な経営環境下でも揺るがない「任せる経営」の土台となります。

変革の扉を開くのは経営者の「覚悟」

市場環境が激変するなかで、なおも輝きを放つ経営者に共通しているのは、決して特別な才能ではありません。それは、誰よりも早く、深く、未来に対する「圧倒的な危機感」を抱き、それを正しく行動へと変換したという事実です。

「まだ大丈夫だろう」という慢心を捨て、本業を守るためにあえて既存の枠組みを超える。教育の質を高めるために、経営という手段に正面から向き合う。そして、一人の限界を認め、組織を信じて任せる。これらの決断はすべて、生き残るための切実な危機意識から生まれています。

経営環境がどれほど厳しくとも、変化を恐れず、自らをアップデートし続ける経営者の前には、必ず新しい可能性が開けます。まずは、現状を維持しようとする心理に一線を引くことから始めてみてください。その小さな一歩が、厳しい時代を勝ち抜くための確かな転換点となるはずです。

執筆者プロフィール

  • 島崎卓也
  • 船井総合研究所において長年コンサルタントとして教育業界の最前線に立ち続け、数多くの幼稚園・保育園経営を支援。