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飲食店コンサルタントが語る、参入障壁の高いビジネスモデルを成功させる方法

2026.05.13
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飲食店コンサルタントが語る、参入障壁の高いビジネスモデルを成功させる方法

今回は飲食店の数多くの成功事例を間近で見てきた、地域コングロマリット支援部の石本泰崇が、参入障壁の高い「強いビジネスモデル」を作るための視点をまとめています。激戦の飲食業界を題材に、企業がいかにして独自の強みを築き、勝ち続けるのか。そのヒントをお届けします。

INDEX

解説:株式会社 船井総合研究所 石本 泰崇

2009年船井総合研究所に中途社員として入社。20年以上外食業の現場でキャリアを積んだ後、船井総合研究所に入社。上場外食企業の営業部長を経験し130名以上のメンバーのマネジメント実績を活かし、多くの飲食企業の業績UPを実現している。入社後は年商10億を目指すロードマップ提案と伴走支援を実施。コロナ後からじは中堅大手企業向けの100億企業化コンサルティングを中心に業態開発、既存店活性化(ビジネスモデル構築)、マーケティング(販促支援)、人材育成など成長戦略の提案、伴走支援を実施。

「替えがきく店」は成功しづらい

飲食業界への参入を検討している、あるいはすでに参入して苦戦している——そんな経営者の方は少なくないと思います。飲食業は異業種からの参入も多く、常に新しいプレイヤーが市場に加わる一方で、撤退も絶えない厳しい世界です。

短期間で多くの店が姿を消してしまう理由の一つに、飲食業界特有の「模倣」があります。どんなに目新しいメニューで繁盛したとしても、すぐに競合が視察に訪れ、そっくりそのまま真似される。結果として、最初は「わざわざ行く理由(特別感)」があったはずの店も、参入障壁が低いため簡単に模倣され、市場に似たような店が溢れてしまいます。あっという間に特別感が消え、顧客にとって「替えがきく店」になってしまうのです。

これは「あそこに行けば何でも食べられる」という総合型のファミレスや居酒屋も同様です。顧客からすれば「この居酒屋が閉まっているなら、隣の居酒屋でもいいや」となってしまいがちです。つまり「なんでもある」は、ある意味「その店でなければならない理由がない店」とも言えます。

しかし、この厳しい飲食業のなかで、選ばれ続け確実に業績を伸ばし続けている企業もあります。

「専門特化」が成功への勝ち筋

飲食業界で成功している企業に共通しているのは、あえて「参入障壁の高い商材」に絞った「専門店」という業態で勝負している点です。

実際、コロナ過以降「何でもある」総合型が苦戦する一方で、台頭しているのがこの専門店です。「これを食べるなら絶対にあの店!」という強い目的来店を生み出し、着実にファンを獲得しています。

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参入障壁が高い商材とは、たとえばふぐやうなぎ、のどぐろのような高級魚、あるいは宮崎牛や神戸牛といったブランド和牛など。こうした食材は独自の仕入れルートや専門知識が必要で、おいそれとは手に入りません。単価を合わせるのも安定供給するのも至難の業であるため、他社が「うちも真似しよう」と思っても、簡単に真似ができないのです。

さらに見逃せないのが、インバウンド(訪日外国人)客との相性の良さです。「ふぐ料理店」「和牛専門店」という明確なコンセプトは、外国人観光客にとっても一目で何のお店か分かりやすいです。「何でもありますよ!」と、ぼやけたアピールをするより「うちの武器はこれです!」と一点突破するほうが、集客力が高まります。

ただし、一つだけ注意点があります。専門店化とは、単に「メニューを絞る」ことではありません。

万が一、資金力のある競合が同じ高級食材を仕入れてきた時、単なる「モノ売り」では負けてしまいます。だからこそ、目の前で調理するライブ感や、食材のストーリーを語る接客など、「その店でしか味わえない特別な体験(CX)」をセットにすることが不可欠です。「真似できない商材」に「真似できない体験」を掛け合わせる。それこそが、他社が絶対に乗り越えられない壁をつくる「専門特化」の本質です。

「調達力」に磨きをかけ、さらに参入障壁を高くする

専門特化で突き抜けるために、絶対に避けて通れないのが「食材の調達力」です。

たとえば、あるチェーンは自社グループで魚の養殖場を運営しています。生産(川上)から店舗での提供(川下)までを一貫して手掛けることで、他社をまったく寄せ付けない「究極の参入障壁」を生み出しているのです。

この川上戦略のメリットは、大きく2つあります。

1つ目は「絶対的な安定供給」です。何かに特化した専門店にとって、看板メニューが「今日は市場で手に入らなかったので品切れです」ではお話になりません。自社で生産体制を握ってしまえば、天候や外部環境に振り回されることなく、確実にお店へ食材を届けられます。

2つ目は「他店が追いつけない品質の担保」です。 たとえば「のどぐろ」一つとっても、小ぶりなサイズであれば、お金さえ出せば他店でも仕入れることはできます。しかし、「こんな立派なのどぐろ、他では絶対に食べられない!」と唸るような特別なサイズや品質となると、そんじょそこらでは手に入りません。

自社で独自の仕入れルート(川上)を押さえていれば、この「ここでしか食べられない圧倒的な品質」を独占し、コントロールしやすくなります。

参入障壁が高い商材なら「安売り」は不要になる

そして、参入障壁が高い商材を扱う最大のメリットは、「高い収益率」を維持できることです。

他社が絶対に真似できない価値ある食材を、わざわざ安売りする必要はありません。簡単に替えがきかない(=競合がいない)からこそ、不毛な価格競争に巻き込まれることもなく、価値に見合った正当な高値で売ることができます。

さらに、「多店舗展開」にもメリットがあります。

「自社で川上(調達ルート)を押さえる戦略」は、フランチャイズやのれん分けをする際に最強のカードになります。なぜなら、加盟店に対して自社グループから食材を供給することで、「卸し」という強烈なマネタイズポイントが生まれるからです。毎月のロイヤリティだけでなく、食材供給という太くて安定した収益源を確保でき、強いビジネスモデルを確立できます。

「専門特化」は、現場の生産性と教育スピードを劇的に変える

「専門特化は差別化には良いが、多店舗展開しにくいのでは?」——そう感じる方もいるかもしれません。しかし実際には、その逆です。専門特化こそが、現場の生産性を高め、多店舗展開のスピードを加速させます。

最大の理由は、オペレーションの圧倒的なシンプルさにあります。

総合型の店舗と比較すると、専門店は扱う食材もメニュー数も圧倒的に少なくて済みます。メニューがいろいろあると、それだけ従業員に教育すべきことが増え、調理に必要な人員も増えます。一方、専門店はいろいろ作らないため、人員を圧縮できます。この「専門性が高く、かつ生産性が高い業態」を作れることが、競争優位の源泉となります。

専門特化から「食のコングロマリット」へ

一つの業態で圧倒的な成功を収めた後、さらに事業をスケールさせるための次なるステージが「食のコングロマリット(多角的企業集団)」化です。

飲食企業の成長には、大きく分けて3つのステップがあります。

  • 多店舗展開:同じ屋号のまま、成功モデルを横展開し店舗数を増やす。
  • マルチブランド展開:培ったノウハウを活かし、異なる食の業態(例:ふぐ専門店の次に丼専門店や定食業態など)を運営する。
  • 食のコングロマリット:飲食店経営の枠を超え、食品物販、酒造会社のM&A、養殖場の運営など、「食」という大きな括りで事業を多角化する。

ここで重要なのは、成功している飲食企業がいきなり「食と関連の薄い異業種」へ進出するケースは極めて稀だという点です。

あくまで「食」を軸に、川上の生産(養殖・農場)から、加工、卸、そして店舗での提供まで。本業との親和性が高い領域へと、縦に、横に、深掘りしていく。このように自社グループ内で完結させることこそが、最も自然で、かつ強力な成長戦略なのです。

社長の決断スピードも不可欠

ただし、戦略がどれほど優れていても、それを動かす経営者の「スピード」がなければ、チャンスは逃げていきます。成功する社長は「いける」と判断した瞬間に動きます。物件一つとっても、迷っている間に他社に奪われれば、それは大きな「チャンスロス」になることを知っているからです。

スピードを維持するために不可欠なのが、「権限移譲」と「現場主義」の絶妙なバランスです。何でも自分で抱え込めば、組織の歩みは止まります。だからこそ部下に任せるべきは任せますが、重要な意思決定だけは、必ず自分の目で現場を確かめる「一次情報」を重んじます。

繁盛店があれば自ら足を運び、食べて、感じる。「部下の報告」という二次情報ではなく、自分の目で見た「確信」があるからこそ、迷いのない、かつ精度の高い決断を下せるのです。

成功するために――穴場の商圏はどこか

最後に、具体的な「狙い目の商圏」について一つお伝えします。

それは観光地のような「限られたエリアに強い集客力がある場所」が有力な選択肢となります。観光地は集客力がある一方で、昔ながらの店が多く、その土地の特徴を活かした専門店が意外と存在しないケースがあります。

その土地ならではの食材と連動した専門店を出すことで、目的来店と観光需要の両方を取り込むことが可能です。市場規模が十分にあり、なおかつ専門店がないエリアであれば、先行者メリットを最大限に享受できるはずです。

さらに、専門店化の先には「複合型」という発展形も考えられます。これは専門店の寄せ集めであり、デパ地下がまさにその好例です。専門特化されたものがいろいろ楽しめるという体験を一つの場所で提供する——この複合型モデルは、小売りや食物販の領域で特に進んでいます。

「自社の強みとなり得る、参入障壁の高い食材(武器)は何か?」
その問いから、単なる店舗運営を超えた「食のコングロマリット」で成功する企業が一つでも多く誕生するよう、私自身これからも全力で支援を続けていきたいと思います。