第3回: お金がたまる社長の行動〈資金繰り編〉
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2026.11.08
著者:社長online編集部 平田賢司
INDEX
会社のお金が減る「見えない穴」を塞ぐ
会社経営において最も恐ろしいのは、「利益は出ているのに、なぜか手元にお金が残らない」という状態です。資金繰りがひっ迫すると、最終的に社長が個人の資産を取り崩して会社へ補填せざるを得なくなり、「社長のお金を貯める」どころか大切な個人の財産まで削られてしまいます。
社長のお金が着実に貯まる状態をつくる絶対条件は、まず土台となる「会社のキャッシュ(現預金)」を潤沢にすることです。会社に資金的なゆとり(防波堤)があってはじめて、社長自身がリスクなく安全にお金を貯める選択ができます。
社長個人の資産を守り抜き、手元にお金を貯め込むための強固な資金繰り体制ができているか、以下の9項目でセルフチェックしてみましょう。以降、各項目について詳しく解説します。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ 赤字だと、過去に払った税金の「返金」ができる?
☑ 役員貸付金・借入金を整理し、資金ショートを防ぐ
☑ 貴重なキャッシュの流出を防ぐ「撤退基準」の設定方法

使える「補助金・助成金」を事前に確認している
お金が減るリスク: 設備投資やシステム導入、賃上げをすべて自己資金で賄うと、手元の現金が大きく減ってしまいます。特に補助金・助成金は「契約・発注後」の申請が一切できないため、事前確認を怠ると、会社に残せたはずの数百万〜千万円単位のキャッシュをどぶに捨てることになります。
解決策: お金を動かす前に「発注前の確認」をルール化しましょう。例えば「業務改善助成金」や「省力化投資補助金」といった制度を活用すれば、自社の持ち出しを最小限に抑え、手元にキャッシュをしっかり残せます。
「入金は早く、支払いは遅く」を徹底している
お金が減るリスク: 入金が遅く支払いが早いと、売上を立てても自社の口座に現金がたまるスピードが遅くなります。手元の現金が圧迫されると、万が一の際の自腹補填リスクを抱えるだけでなく、本来なら社長の報酬や退職金に回せるはずの「自由な現金(余剰資金)」の底が低く抑え込まれてしまいます。
解決策: 「回収は早く、支払いは遅く」条件交渉を行い、手元の「常時残高」を底上げしましょう。手元に常に潤沢な現金がある状態を作れば、突発的なリスクへの防壁ができるだけでなく(守り)、浮いたキャッシュを「役員報酬の増額」や「退職金の積立」へ安全に回せるようになり、最終的に社長個人のお金を確実に増やすことにつながります(攻め)。
「社会保険料の算定時期」を意識して業務を平準化している
お金が減るリスク: 社会保険料は、4〜6月に支払う給与(残業代を含む)の平均額で向こう1年間の負担額が決まります。この時期に突発的な残業が重なると、会社の社会保険料負担が高いまま固定され、例えば従業員50名規模の会社であれば年間で約200万円単位のコストが余分に膨らむ可能性があります。
解決策: 急ぎでない社内タスクや納期の調整を行い、4〜6月に残業が偏らないよう業務を分散させましょう。どうしてもこの時期が繁忙期になる場合は、顧問社労士に「年間平均の特例」が使えないか相談してみるのが確実です。
赤字が出た際、過去に払った税金の「返金手続き」を検討している
お金が減るリスク: 赤字になった際、多くの会社は「今年の赤字は、翌年以降の黒字と相殺する(繰越控除)」という処理だけで終わらせがちです。しかし、前年に税金を払っていた場合、国から「前年払った税金を今すぐ現金で返してもらう手続き(繰戻し還付)」を使わないと、今いちばん必要な運転資金を確保し損ねるリスクがあります。
解決策: 赤字が見込まれる期末は、顧問税理士に「将来の節税(繰越控除)ではなく、繰戻し還付で今すぐお金を戻せませんか?」と相談してみましょう。裏技ではなく法律で認められた正当な権利なので、手元のキャッシュを最優先で確保できます。
不要な在庫や設備を処分し、現金化や経費化をしている
お金が減るリスク: 使っていない機械や売れない不良在庫を放置していると、保管コストや固定資産税がかかり続けます。また、ルールどおり処分すれば正しく経費にできるはずの価値を放置することになり、本来払う必要のない税金まで払ってしまうという無駄が生じます。
解決策: 売却して現金に変えるか、ルールにのっとって適切に廃棄しましょう。廃棄によって「まだ経費になっていなかった残りの価値」を今年の経費(除却損・廃棄損)として正しく計上すれば、適正な税額となり、手元のキャッシュを確実に守ることができます。処分時は、実務の証明として「廃棄証明書」や写真を残しておきましょう。
役員貸付金・役員借入金を計画的に整理している
お金が減るリスク: プライベートな支払いを会社の口座で行ったり、会社の資金不足を個人のポケットマネーで補填したりすると、帳簿上に「社長と会社の間のお金の貸し借り(役員貸付金・役員借入金)」が残ります。これがあると銀行から「公私混同している会社」と判定され、いざというときに必要な融資を受けられず、資金ショートを起こすリスクが高まります。
解決策: 役員報酬の金額を調整して少しずつ相殺するなど、税理士と相談して計画的に帳簿から消していきましょう。決算書を正しい状態に整えておく(貸借対照表の健全化)ことが、万が一の際に銀行からスムーズに資金調達を行い、会社のお金を守るための重要な準備になります。
赤字事業からの「撤退基準」を決めている
お金が減るリスク: 事業や店舗を始める段階で、あらかじめ明確な撤退基準を決めている経営者は多くありません。そのため、赤字が出ても「もう少しで黒字化するはず」「これまで投じた資金がもったいない」という思いに引きずられ、ほかの黒字事業で得た貴重なキャッシュを失い続けるリスクがあります。
解決策: 事業をスタート・見直す段階で、「赤字の穴埋めに使っていい金額の上限(例:累計500万円まで)」や「期限(例:2期連続で事業単体が赤字なら撤退)」といった具体的なルールをあらかじめ決めておきましょう。ルールに従って客観的に判断できるようにしておくことが、会社全体の資金を守るための手堅いリスク管理になります。
毎月の試算表(月次決算書)から「現金の増減」を確認している
お金が減るリスク: 毎月の成績表である「試算表」を出していなかったり放置していたりすると、今のリアルな経営状況が把握できません。感覚だけで「利益は出ているはず」と安心していると、「実は借金の返済や未回収で現金が減っていた」という実態に気づけず、対策が後手に回って手遅れになるリスクがあります。
解決策: 顧問税理士に「毎月中旬までに試算表を出してほしい」と依頼し、会社の今の状態をいち早くキャッチアップできる体制を作りましょう。届いたら試算表の「現預金の増減」を確認し、税理士に「今月、手元の現金が減った一番の理由は何ですか?」と1分ほど尋ねてみましょう。経営状況を素早く把握して即座に対策(回収の督促や仕入れの調整など)を打つことが、確実なキャッシュ防衛になります。
「月商の3〜6か月分の現預金」を蓄える経営をしている
お金が減るリスク: 手元の現預金が月商の1〜1.5か月分程度だと、取引先の入金遅れなどが1回起きただけで資金繰りが詰まります。手元資金が尽きると、最終的に社長個人の貯金から会社へ穴埋めすることになり、会社だけでなく社長個人の大切な資産まで削られてしまいます。
解決策: 今すぐその金額が用意できなくても問題ありません。大切なのは「会社にいつでも動かせる現金を一定以上残しておく」という安全基準を意識することです。日々の利益を少しずつ積み立てる、あるいは業績が良い時期に手すりのような予防的融資を活用するなどして、段階的に「月商3〜6か月分」の基準を目指しましょう。この現金の防波堤を作ることが、どんな経営局面でも会社と社長個人の資産を守る強固な土台になります。
