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売上3倍!「スポーツチーム経営」が経営戦略の柱になる

2026.10.26
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売上3倍!「スポーツチーム経営」が経営戦略の柱になる
「スポーツチームを持つ」と聞くと大富豪か大企業にしか関係のないイメージを持ちますが、中小企業の戦略の一つとしてチームを運営しているケースが多々あります。今回は、採用難や知名度不足に悩む中小・中堅企業に向け、元Jリーガーの船井総研の竹田忠嗣氏に「スポーツチーム運営」のリアルを聞きました。

解説:元Jリーガー・船井総合研究所 竹田忠嗣

INDEX

スポーツチームの運営は大企業だけのもの?

「スポーツチームを持つのは、潤沢な資金がある大企業だからこそできることでは?」

自社でスポーツチームを持つと聞けば、そう考えるのがごく自然な受け止め方かもしれません。

しかし今、自社チームを立ち上げることで、急成長を遂げる中小・中堅企業が増えています。知名度アップや地域連携はもちろん、「面白そうな会社」というブランドづくりにもつながる合理的な経営戦略。使えば消えてしまう求人費や広告費を、価値が残り続ける「自社の資産」へ変える有効な手立てとなります。

売上3倍!「山岸運送」が実証したスポーツチームの威力

実際にまずひとつ成功事例を紹介します。静岡県に本社を置く山岸運送株式会社は、かつて物流業界特有の深刻な人手不足に悩まされていました。

そんな状況を打破する「起死回生の一手」として、同社は2016年に社会人硬式野球チーム「山岸ロジスターズ」を創設しました。

すると、初年度の入部セレクションには、全国から約70名もの大卒者がエントリー。一気に25名もの若手社員を採用することに成功したのです。

チームの創設は採用難を解決しただけでなく、企業全体のブランド力を押し上げ、本業の業績向上に直結しました。チーム創設後の数年間で、同社は以下のような成果を出しています。

  • 社員数の増加:462名の増員を達成(特に20代社員が大幅増)
  • 本業の業績拡大:売上高が約3倍の90億円へ拡大、営業利益率も3.5%向上
  • 財務基盤の強化:総資産が30億円増加

単なる「求人広告費」に資金を使い続けるのではなく、スポーツチームという「自社の資産」に投資したことが、圧倒的な採用力とブランド力を生み、本業の大きな成長を引き寄せたのです。

スポーツチームがもたらす「3つの経営メリット」

では具体的にスポーツチームの保有は、企業にどのような変化をもたらすのでしょうか。中小・中堅企業が得られるメリットは、主に以下の3点です。

  • 1. 企業の認知向上:試合結果などで露出が増え、企業の認知度が自然と高まります。取引先との会話のきっかけや試合観戦を通じた交流も生まれ、結果として本業の営業活動や新規開拓の後押しにもつながります。
  • 2. 意欲的な若手が集まる「採用力」の強化:「仕事とスポーツを両立したい」という意欲的な若手が全国から集まるため、採用面で強力なアピールになります。さらに、チームを会社全体で応援する文化が生まれることで、社員のエンゲージメント向上も期待できます。
  • 3. 地域社会・行政との強固な連携:子ども向けスポーツスクールなどの地域貢献を通じて、行政からの信頼を獲得しやすくなります。こうした実績が、公共施設の指定管理の受託や、地方創生ビジネスといった新たな事業機会を引き寄せるケースも珍しくありません。
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▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。

☑ 気になる「コスト」のリアルと資金調達
☑ 本業とシナジーを生む組織マネジメント
☑ 2つの参入アプローチ

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気になる「コスト」は?

メリットや成功事例は頭では理解できても、経営者として最も気になるのは「実際、いくらかかるのか」「資金繰りは悪化しないか」というコスト面でしょう。スポーツチームの保有を成功させるには、正しい財務戦略の視点が欠かせません。

立ち上げコストと「資産」への転換

チームの運営費は競技や規模で大きく変わります。例えば社会人硬式野球チームの場合、年間運営費は約1,000万円がひとつの目安。ここから地元企業などのスポンサー収入(例えば約500万円)を見込むと、実質的な自社負担は年間500万円ほどに収まる計算です。

一見すると大きな金額ですが、これを「年間1,000万円で質の高い採用や継続的な広報活動を行っている」と考えればどうでしょうか。使えば消えてしまう求人広告費や販促費を置き換える投資と考えれば、十分に現実的な数字と言えます。

競技ごとに異なる「年間コストの下限目安」

競技の選択次第でコストは大幅に抑えられます。試合数や(必要な場合)外部の監督・コーチ、会場手配、各種登録料などを踏まえた年間コストの下限目安は以下のとおりです。

  • 社会人野球:実質負担 約500万円〜(他のスポーツと比べ試合数が多い)
  • サッカー / 女子バレー:実質負担 約100万円〜(野球と比べ試合数が少ない)
  • バスケットボール:実質負担 約20万円〜(会場費がかからないケースがある分、コストが抑えられる)

まずは自社の予算規模に合わせ、手軽に始められる競技からスモールスタートするのも有効なアプローチとなります。

破綻を防ぐ「プロ化しない」規律

スポーツチーム経営において、肝となるのがチームの方針をどうするかです。具体的には強化の観点から選手補強をどう考えるか。観客を呼ぶために補強を繰り返せば、選手への高額な報酬や手当で人件費が一気に膨らみ、本業の経営を圧迫しかねません。

これを防ぐカギは、一つの例として選手に特別な「スポーツ手当」などを支給せず、「本業の仕事で一般社員と同じように給与を稼いでもらう」という規定です。スポーツによる収益に依存せず人件費をコントロールすることこそが、中小・中堅企業がチームを長く持続させるための絶対条件と言えます。

補助金や助成金を活用した資金調達

運営資金の負担をさらに軽減するためには、国や自治体の制度を賢く活用することも有効な手段です。

スポーツチームの活動は、地域の活性化や子どもたちの教育、地方創生といった行政が目指す方向性と合致しやすいため、補助金や助成金の審査に通りやすいという特徴があります。初期の施設整備や、地域向けスポーツスクールの運営事業などにこうした公的資金を充てることで、立ち上げや日々の運営にかかる財務的なリスクを大きく下げられます。

本業とシナジーを生む「チーム運営・組織マネジメント」

「アスリート社員を雇っても現場が回らないのでは?」
「既存社員との間に溝ができるのでは?」

スポーツチームの導入にあたり、現場マネジメントへの不安は付き物です。しかし、業務設計を少し工夫するだけで、中小・中堅企業でも無理なく「仕事とスポーツの両立」を実現できます。

「15時退社」を実現する働き方の工夫

一番の疑問は、練習時間の確保でしょう。 例えば山岸運送では、選手社員の配送エリアを「県内」に限定して15時退社を実現しています。16時から練習に打ち込むスケジュールを組むことで、「日中は本業で稼ぎ、夕方はスポーツに集中する」というメリハリのある働き方が十分に構築可能です。

1年目から「本業の即戦力」にする仕組み

「本業の戦力にならないのでは」という懸念も、業務の割り振り次第で解消します。例えば運送業であれば、倉庫作業や固定ルート配送など、比較的スキル習得の早い業務を中心に任せるのがコツ。新入社員でも1年目から現場の即戦力として定着し、企業側もチーム運営への投資回収を早められます。

裏方スタッフは「わずか3名」で回せる

チーム運営に必要な広報・営業・事務手配などのバックオフィスは、大掛かりな組織を作らなくても問題ありません。実態として運営スタッフは「3名程度」で十分回すことが可能です。

さらに、監督やコーチを自社社員で賄ったり、現役を引退した選手がそのまま運営スタッフへ回ったりするケースも少なくありません。引退後のセカンドキャリアを自社内で用意できる点も、社員の安心感と定着率アップにつながる大きな強みと言えます。

自社に合ったスタートを切る「2つの参入アプローチ」

最後に、実際に中小・中堅企業がスポーツチームを持つ方法について2つ紹介します。

ゼロから「オリジナルチーム」を創設する

山岸運送の事例のように、自社で一から選手を採用し、新しいチームを立ち上げる方法です。

  • 特徴とメリット:最初から「自社の理念」や「本業との両立ルール」を組み込んだチーム設計が可能です。既存のしがらみがないため、会社のカラーを前面に出したブランディングがしやすく、社員の帰属意識も高まりやすいという強みがあります。
  • 懸念点:ゼロから選手を集め、練習場所(グラウンドや体育館)を確保し、連盟への加盟手続きを行うなど、実際に活動を軌道に乗せるまでの準備期間と労力が必要になります。

既存の「地域クラブ」を引き継ぐ(買収・スポンサー型M&A)

数は少ないですが、すでに地域で活動しているクラブチームの経営権を取得したり、メインスポンサーとして実質的にチームを引き受けたりする方法です。経営難に陥っている地域のクラブチームを、地元企業が救済する形で引き継ぐケースも増えています。

  • 特徴とメリット:すでに選手、指導者、練習拠点、そして地元のファンが存在しているため、ゼロから立ち上げるよりも圧倒的なスピードで参入できます。また、「地域のクラブを救った」というストーリーが、地元での企業イメージを飛躍的に高める効果も期待できます。
  • 懸念点:もともとチームにあった文化やルールと、自社の社風(本業優先の規律など)をどうすり合わせていくかという、買収後の組織統合(PMI)において慎重なマネジメントが求められます。

ここまで、中小・中堅企業が「スポーツチームを保有する」メリットや運営のリアルについて解説してきました。

スポーツチームの保有は単なるボランティアや道楽ではなく、人手不足やブランド力不足を打破する極めて合理的な経営戦略です。使えば消える広告費や販促費を「自社の資産」へと変え、本業の成長を加速させる選択肢として、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。