「何でも屋」と「専門特化」生き残るのはどっち?
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2026.08.25
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- 売上を増やすために間口を広げるべきか、それとも狭い領域に絞って「専門特化」か?多くの社長が悩むこの選択ですが、実は生き残る会社には「明確な共通点」があります。本記事では船井総合研究所・建設支援部の永田大輔が、今どちらの戦略をとるべきなのか、その考えをまとめています。
解説:船井総合研究所 建設支援部 永田大輔
執筆:船井総合研究所 社長online編集部 平田賢司
INDEX
「なんでもやる」は危険?
「少しでも売上を伸ばしたい」「せっかくの相談だから、とりあえず受けておきたい」——。経営者であれば、事業を成長させるために、あるいは業績への不安から、少しでも間口を広げたくなる気持ちは痛いほどわかります。
しかし、数多くの企業を見てきたなかでお伝えしたいのは、「いきなり風呂敷を広げること」は、「危険」ということです。
たとえば、建設業界のホームページでよく見かける「なんでもお任せください」という言葉。施工実績には住宅、神社、病院とあらゆる建物が並んでいます。一見、頼もしく見えるこの「なんでも屋」スタイルですが、いきなり風呂敷を広げることには、3つのデメリットが存在します。
■「なんでも屋」スタイルの3つのデメリット
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① 「何が強みか」がぼやけ、誰からも選ばれない
良かれと思ってあれもこれもとメニューを増やせば増やすほど「結局、何が得意な会社なのか」という輪郭がぼやけ、逆に選ばれにくくなる恐れがあります。 -
② 現場が疲弊し「炎上リスク」が高まる
「なんでもやります」と仕事を受けてしまうと、一番割を食うのは現場です。とくに技術者や職人はプライドが高く、未経験の分野でも安易に受注しがちです。その結果、慣れない対応に追われて現場が疲弊し、最悪の場合はトラブルや炎上を引き起こし、自らの首を絞めることになります。 -
③ 営業がパンクし、提案が「中途半端」になる
扱う分野が多岐にわたると、最前線に立つ営業担当者も機能不全に陥ります。
たとえば「非住宅ならお任せ」と言っても、クリニックと倉庫では必要な知識が全く違います。一人の営業がすべての専門知識を網羅することは物理的に不可能であり、「広く浅い」中途半端な提案しかできないため、優良な顧客は逃げていきます。
成功の鍵は「一点突破」。なぜ専門特化が不可欠なのか
では「なんでも屋」ではなく何をすべきか。
私は「いきなり風呂敷を広げず、まずは事業を絞り込み専門特化すること」が重要だと考えています。たとえば建設業界なら「クリニック建築専門店」、DX支援の会社ならまずは「介護業界に絞ったDX支援」というように、ターゲットを絞ります。
「絞ったら仕事が減るのでは?」という不安もあるかもしれませんが、例えばご自身がクリニックを建てるドクターであれば、「なんでもできます」という会社より「クリニック専門の会社」に託したいはずです。専門特化するだけで信頼度は跳ね上がり、価格競争からも抜け出せます。
特に地方の企業ほど「絞り込む」という発想がありません。エリア内に「〇〇専門」と打ち出しているライバルが、実は一社もない……という状況は珍しくないのです。
つまり、「うちはこれの専門店です」と宣言するだけで、すぐに競合がいないポジションを確立できる。これが専門特化の強さです。
あれもこれもと手を広げないからこそ、営業も現場も一つの分野に集中でき、ノウハウも一気に蓄積されます。まずは勝てる場所を見極めて攻めることで、会社は着実に強い組織へと変わっていくのです。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ 実績がなくても「専門店」として旗揚げする方法
☑ 専門特化で成功した建設会社の「段階的な拡大」事例
☑ ターゲットに合わせた「集客手法」の使い分け戦略
実績がなくても、まず「旗揚げ」から始める

「でも、うちにはその分野の実績がまだ少ないから……」 そう思う経営者もいるかもしれません。しかし、実績がなくても、まずは「専門店です」と旗揚げすることが大切です。
具体的には、その分野に特化したロゴを作り、名刺やチラシ、専用のWebサイトを用意します。実績がない段階ならサービスイメージを掲載すればよいですし、知識が足りなければ、最初は外部の専門家と連携すれば対応できます。
重要なのは「この分野の専門家です!」といち早く宣言すること。
前述の通り、地方にはまだ専門店を名乗るライバルがほとんどいません。だからこそ、先に宣言した時点で、その地域における第一人者としてのポジションを築きやすくなります。実績は、そこから一歩ずつ作っていけばいいのです。
絞ることは「捨てること」ではない

「事業を絞り込んだら、ほかの案件を失うのではないか?」 そう感じる経営者は多いでしょう。しかし、絞ることは一見、機会を損失しているように見えて、実は逆の効果が生まれます。
ある分野で専門家として認知されると、「あそこまで専門的な仕事ができるなら、これも任せられるはずだ」と信頼され、結果として別の案件の相談が自然と舞い込むようになるケースは少なくありません。
また、「絞る」とは、既存の仕事や紹介案件をすべて断るという意味ではありません。それらは今まで通りこなしつつ、自社のマーケティングリソース(営業の時間、広告予算、制作物など)を特定の分野に集中させる、ということです。
今まで「広く浅く」いろんな企業へ挨拶回りをしていた営業担当者を、まずは勝てる領域に絞って動かす。これだけで、営業効率も成果も着実に変わっていきます。
注文住宅から福祉施設へ。専門特化で成功した建設会社

実際に専門特化で成功した、ある名古屋の建設会社を紹介します。
【事例】名古屋の建設会社:注文住宅から「老人ホーム建築」への特化
10年前、この会社は年間30〜50棟を手がける一般的な注文住宅の会社でした。売上は10億〜12億円ほどでしたが、市場の縮小を見据え、社長は強い危機感を抱いていました。
そこで舵を切ったのが、当時実績ゼロだった「老人ホーム建築」への専門特化です。
ここで「非住宅なら何でもできます」と風呂敷を広げず、まずは老人ホーム一点に絞り込みました。その結果、現在は年間わずか5〜7棟の受注で、住宅50棟時代と同等の売上を安定して達成しています。個人向けの住宅に比べて1案件の単価が桁違いに大きく、専門知識をもとに主導権を握って提案できるため、生産性は大きく向上しました。
さらにこの会社が成長できた理由は、ここからの「段階的な拡大」にあります。
■ 段階的な拡大のステップ
- まず老人ホーム建築で安定受注の基盤を確立
- 約5年後、次のステップとして障害者グループホーム建築に参入
- さらにその後、クリニック建築や小規模ガレージ建築へと展開
すべての分野を同時に始めたのではなく、1つの分野を確実に軌道に乗せてから次の柱を立てる。この「まずは一点突破、そこから段階的に広げる」というアプローチこそが、専門特化戦略の正しい進め方なのです。
ターゲットに合わせた「集客手法」の使い分け

専門特化を進める上で、もうひとつメリットがあります。それは対象を絞り込むからこそ、ターゲットに最適化した集客(マーケティング)ができるという点です。
「非住宅」などとひとくくりにしていると気づけませんが、ターゲットが「法人」か「個人」かで、有効なアプローチは根本から異なります。先ほどの名古屋の建設会社でも、以下のように完全に手法を使い分けています。
法人向け(BtoB:老人ホームなど)は「アナログ」で攻める
介護事業の経営者が、ネット検索から建築を依頼することはほとんどありません。有効なのは、銀行や不動産会社など約20社の「紹介ルート」を開拓すること、そして「介護経営のノウハウ」を伝える定期的なDMやセミナー開催です。自社の売り込みではなく、相手の経営課題に寄り添うことで信頼を獲得しています。
個人向け(BtoC:ガレージなど)は「Web」で攻める
一方で、一般ユーザーがターゲットの場合は、スマホ検索が主役になります。この会社では、本体とは別に「ガレージ専門のWebサイト」を立ち上げています。顧客の検索意図にピッタリ合う専門サイトだからこそ、ネット上で見つけられやすく、問い合わせに繋がっています。
このように、同じ会社の事業であっても、ターゲットによって攻め方はまったく変わります。事業をひとまとめにせず、専門特化させるからこそ、迷いのない効果的なマーケティングが設計できるのです。
絞ることは怖くない。専門特化で高収益企業へ

事業を絞る決断は、一瞬怖く感じるかもしれません。
しかし、その一歩を踏み出した先には、価格競争から解放され、顧客から「あなたにお願いしたい」と指名される未来が待っています。どんな会社でも「この分野なら一番です」と胸を張れる領域は、必ずあります。もし今、事業の方向性に迷いを持たれている経営者がいれば、一度専門特化を検討してみてください。
