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島原で人気の患者が絶えないクリニック 効率化と人材教育の両輪経営

2026.05.14
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島原で人気の患者が絶えないクリニック 効率化と人材教育の両輪経営

長崎県島原市。人口約4万人のこの街に、患者が絶えない整形外科クリニックがあります。2020年に開業した、「医療法人さわやか いでた整形外科クリニック」です。接客業でもなく、サービス業でもない。にもかかわらず、スタッフ全員が「感じがいい」と言われるクリニックが、どうやって生まれたのでしょうか。同クリニックを率いる、出田聡志院長にお話を伺いました。

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人口約4万人の街でひときわ人気、いでた整形外科クリニック


画像:いでた整形外科クリニック公式WEBサイト

同院は、最新の医療機器を備え、複雑な症例にも対応できる診療体制を持ち、高齢者の慢性疾患からスポーツによる急性外傷まで、幅広い患者層を受け入れることができるのが強みです。

同クリニックのクチコミを見てみると、診療範囲に対する評価もさることながら「スタッフのおもてなしに感動した」「スタッフの皆さんも優しく安心して受診できた」「患者数に対して待ち時間が非常に少ない」といった接遇やオペレーションに関する高評価が目立ちます。

全国の医療従事者が驚く「効率化」と「接遇力」


画像:PIXTA

2020年10月に開業して以来、順調に患者数を伸ばし続けている「いでた整形外科」。開業当初は「こんなに患者さんが訪れるとは予想していませんでした」と出田院長は話します。

島原市内で通院リハビリ機能を持った整形外科が他になかったことから、「地域のためにも、うちがやるしかない」と、通院リハビリ機能を持って開業しましたが、1日100人以上の患者が訪れるという、まさに予想以上の状況に。

患者数の増加に伴って、開業当初8人だったスタッフ数も、2021年末には18人へと増加。現在は35人のスタッフでクリニックを運営しています。今でこそ、伸び伸びと働いているスタッフですが、はじめから良い雰囲気だった訳ではありませんでした。

「必要に迫られてスタッフを急に増やした2021年が、一番つらかったですね。マネジメントもできず、生産性が低いので残業も多かったです。人をどう育てたらいいか分からず、大変でした」(出田院長)

ところが、それから5年経った現在、医療現場に詳しい船井総合研究所のコンサルタント・中右有美によると「いでた整形外科さんは、この規模のクリニックにおいては最大限の効率化を実現していると言えます」と評するまでに効率化スキルは向上。

さらに先述したように、患者さんからの評価では「応対が非常に素晴らしい」という声がたつほど、業務効率化と応対品質の両輪を実現しています。その点から、全国の医療従事者からも注目を集めており、全国各地の同業者が視察に来ることも増えていると言います。

視察に訪れた他院の人たちからは、「スタッフが爽やかで素晴らしい」「ここで働きたい」と絶賛されるだけでなく、金融機関や取引業者など、関わる人達が自然とファンになって行くほどの魅力と活気を持った組織へと成長していました。

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▼ この記事の後半では、以下の実践的なノウハウを公開しています

☑ 【地方クリニックが実践】生産性を劇的に高める「現場効率化」の3つの施策
☑ 【組織崩壊の危機を打破】限界を迎えた効率化から「人への投資」に切り替えるタイミング
☑ 【次世代リーダーを育成】やらされ感をなくし、自律的な組織を作る「理念委員会」の運用法

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現場効率化への取り組み


画像:PIXTA

医療現場において業務効率化をするということは、患者の待ち時間を減らすといった顧客満足向上のほか、スタッフのメンタルを保つ点においても非常に重要なポイントです。

また、出田院長には「生産性を高めることで、地方であっても全国平均レベルのしっかりとした給与を還元したい」という想いが根底にあったことから、開業当初から積極的に業務効率化を推進していきます。

  • 開業当初から電子カルテでの管理を想定し、パソコンが扱える人材を戦略的に採用
  • WEB予約システムで、診察の待ち時間を軽減
  • 事前問診や診療後の説明はスタッフに委譲することで、診察数を増やしつつ、患者の待ち時間を減らすように工夫

また、リハビリ部門における業務効率化にも取り組みます。かつては、診察点数もどんぶり勘定な側面があったといいますが、「1日21単位(個別リハビリは20分で1単位)」「キャンセル率5%未満」といった具体的な数値目標を掲げ、スプレッドシートで管理するようにしました。

その結果、クリニック全体を通して生産性が向上。また、リハビリにおいては、数値が良くなったことに加えて、1~2年後には品質の向上も見られるようになったと言います。「なんでもそうだと思いますが、量をこなすことで品質が良くなったのではないでしょうか」と出田院長は話します。

効率化から「人への投資」へ


画像:PIXTA

電子カルテやシステム、業務分担による効率化は、一定の段階で限界を迎えます。同院でも「ここから先は人を教育するしかない」というフェーズに差し掛かったタイミングがありました。

発端となったのは、人員を急増させた2021年のこと。理学療法士、看護師、医療事務、受付、柔道整復師——多職種のスタッフを短期間で採用していき、各部門のリーダーを置くことにしましたが、出田院長は「毎日どこかで問題が起きていて、その火消しに追われていました」と、当時を振り返って、そう話します。

年功序列でリーダーを選んだ結果、リーダー間や部門間で諍いが発生。組織は常にギスギスした状態で、それを理由に離職する人も多かったと言います。

「職場の空気感を変えなくてはいけない」

そう考えた出田院長は、単に経験や年齢を理由にリーダーを任せるのではなく、明確な理念を定義して、その理念に共感する人材を育成する必要があると考えました。

「もともと理念はありましたが『絵に描いた餅』の状態だったので、全スタッフに浸透させることを目的に、理念教育の研修を取り入れることにしました」(出田院長)

そこで考えたのは、全員に一度に座学研修を受けてもらうのではなく、5~6人で「理念委員会」を組織するというもの。

  • 各職種(看護師、理学療法士、医療事務等)から選抜した小グループを編成し、約半年間「理念委員会」として約半年間の任期でチーム化
  • DiSC分類によって、自分自身が仕事においてどのようなスタンスを持っているかを分析し、メンバー同士で感想や意見を共有
  • 課題図書を読み、感想文やそれぞれが抱える課題について意見を交換
  • クリニックの理念を自分なりにどう解釈したか、実際の臨床現場でどう行動に移していくかを話し合う
  • 異業種を見学に行き、おもてなしの心や人材育成について現地で学ぶ

この「理念委員会」では、全員一斉に受講するのではなく、あえて小グループを編成することで、自分事化しやすい環境を整える事ができたのだと言います。

特に、異業種への見学会については大きな効果がありました。

研修講師を担当したコンサルタントの中右は「医療現場は、特段意識しなくても患者さんから感謝される機会が多い環境。そこで満足せず、本当の意味での『接遇』を知るためにも、ジャパネットたかたの長崎スタジアムシティに見学に行ってもらいました。異業種かつ、普段触れないようなサービスを受けてもらうことで、自身の現場だけでなく、広い視野を持ってもらう事が目的でした」と、その経緯を語っています。

理念浸透は、組織が小さいうちから注力を


画像:PITA

理念委員会を通じた理念研修の結果、組織の雰囲気やスタッフの行動には、ポジティブな変化が現れました。

いでた整形外科クリニックでは、「思いやり、素直さ、向上心。」「見た目も、中身も爽やかに。」という行動理念を掲げていますが、今では、この価値基準が個人レベルで浸透していると言います。

例えば、スタッフ同士の間で、業務中の出来事に対して「それって爽やかじゃないよね」と笑い合いながら指摘し合う様子が見られたり、「挨拶をした・しない」といった些細な揉め事もなくなりました。この理念が浸透したことで、忙しい中でもスタッフが疲弊せず、笑顔で働ける雰囲気が出来上がっています。

また、理念委員会の活動を通じて、スタッフの中から「もっとクリニックを良くしたい」と積極的に組織を引っ張るメンバーが出てくるなど、次世代のリーダー候補となる人材も見つかったのだと言います。

先述した通り、いでた整形外科クリニックの従業員は現在35人ですが、この規模でこれほど理念研修に注力している組織は多くありません。理念教育の重要性について出田院長は、「直観的にそう感じた」と言いますが、それは間違いではないでしょう。

「今後、10億円規模の売上を目指したい」と語る出田院長。しかし、コンサルタントの中右は「クリニックが10億円を目指すときこそ、理念教育が重要」なのだと言います。

医療業界に限らず、事業規模を拡大する時期には、トップ一人の力で組織を引っ張るには限界が出てきます。組織の人員が増えると、一人ひとりに目が行き届かなくなり、理念も形骸化するケースが多いためです。

それを防ぐためにも、理念を理解しながらマネジメントができる人材を育成する必要がありますが、組織が大きくなってから慌てて育成しても間に合いません。

「うちはまだ組織が小さいから…」と、理念研修を後回しにするのではなく、先々を見据えて今こそ取り組む戦略的視点が必要なのだと、このいでた整形外科クリニックの事例から学ぶことができるのではないでしょうか。

<取材協力>

医療法人さわやか いでた整形外科クリニック
所在地:長崎県島原市親和町丁 3565−11
設立:2020年
診療科目:整形外科、リハビリテーション科
代表者:出田聡志院長
公式HP:https://www.ideta-ortho.com/

  • 医療法人さわやか いでた整形外科クリニック 院長 出田聡志(いでた・そうし)
  • 長崎県島原市出身。自治医大卒業後、研修医を経て、長崎県上五島病院・対馬病院・長崎県島原病院に勤務。
  • 2020年、地元島原で「いでた整形外科クリニック」を開業し、現在に至る。